(マ)シリーズ
□この手に君を
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俺には人間の血が流れている。
幼い頃は、そんな俺を遠巻きにしていた者も少なくはない。
§この手に君を§
「なぁ、コンラッド。ヴォルフ見なかった?」
執務室から出たところで俺は漆黒の王に声を掛けられた。
額には薄らと汗を浮かべ、肩では荒い息をしている。
「そこらじゅう捜し回ったのにいないんだよ、ヴォルフのヤツ」
「ヴォルフラムと何かあったんですか?その慌てようはいつもと訳が違うようだ」
聞くと、その煌めく瞳を曇らせ肩を竦める。
「うん。それがさぁ、おれにも分かんねぇんだよ。なんかこう、物思いに耽ってるなぁ〜って思ったら急に半泣きで飛び出して行っちゃって」
「そうなんですか」、俺は平静な態度で相づちを打ちつつも、内心は張り詰めた緊張で軽いめまいを感じていた。
「あ、そういえば今日が何とかって言ってたな」
やはり……。
ヴォルフラムは忘れていなかったのか。
「陛下……いや、ユーリ。後は俺が探します。だからユーリは部屋で休んでいて下さい」
「いいよコンラッド。俺も探すって!アイツは俺の……」
「いいと言っているんだ!」
「えっ!?……コン、ラッド?」
「あ……っ!!」
俺は今何を言った。
無意識に発したとはいえ、我が国の王に対して怒鳴るなんて。
だけど俺はそれでも……。
「申し訳ありません陛下。俺、何でも罰はお受けます。ですが今回は」
「……分かった、おれは部屋で待ってるよ。だから、絶対ヴォルフラムを連れて帰って来いよコンラッド!」
「陛下……」
「お兄ちゃんなんだから、弟さんの行くトコなんてお見通しだろ?」
王は俺に笑い掛けながら゙行け"、と合図している。
この新米魔王はどこまでも優しい。俺たち眞魔国の者をはじめ、人間や骨飛族……あらゆるものに対して慈悲深い。
俺はそんな魔王に深く感謝した。
「ありがとうございます、陛下」
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