封神演義

□隣同士がいちばん自然
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「おい」


いつだってアイツは人の事をそう呼ぶ。


「聞いているのか」


そう言って、宝具人間は俺の肩を掴んで自分の方へ俺を向かせた。

真っすぐな視線が正面から見据えてきやがる。


「なんだよ、聞いてるって」

「なら返事をしろ」


俺はムッとして軽く睨み付けると、肩に置かれていた手を払い落としてやった。


「あのなぁ、いちいち俺様に触んじゃねぇって言ってんだろうが!」

「触りたいから触ってる。それにオレは悪くない」

「ぬわぁにぃーーー!!!?」


悪びれた様子もなく、宝具人間はまたしても俺の肩を掴んできた。


「お前が誘ってるんだ」

「なッ、何言ってんだテメェは!!……って、どさくさに紛れて顔近付けんじゃねぇ!!!!」


接近していた顔を片手で押し退けて、俺はワザとらしく溜息を吐き出してやった。

そして思った。

つい最近だ。
コイツの言葉や行動がおかしくなってきたのは……と。


「なぁ、最近お前変だぜ?どっか壊れてんじゃねーのか?」

「壊れてなどいない」

「いいや、絶対どっか壊れてんだって。帰って太乙さんに診てもらえよ」


そう提案してやれば、無言のままそっぽ向きやがった。

俺は無性にムカムカと沸き上がる苛立ちをなんとか押さえ付け、宝具人間の言葉を待った。


「…………」

「……あのなー、言葉にしねぇとこっちはさっぱり分かんねぇっての。言いたいことがあんならハッキリ」

「だまれ」

「〜〜〜っな、何だと!!?」


人が大人しくしてりゃ図に乗りやがって!

そう思うとまたオレ様の苛立ちが沸き上がってきた。

もう限界だ!


「テメェ、言わせてもらうがな」


宝具人間の胸倉を掴み上げ、怒鳴り付けようとしたその時オレ様は自身の耳を疑った。


「……何?今何てった?」

「お前が好きだと言ったんだ。バカ者」


最後のは明らかに侮辱しているよな。
けど、確かにコイツ……オレ様にす、す、す、好きって。


「なーッ、何言ってんだよ!?」

「太乙が言っていた。オレがお前を気にしたり触りたいと思ったり声を聞きたいと思うことはおかしくないと。それがいわゆる好きという気持ちなんだ」

「ナタ……ク」


全身が真っ赤に染まっていくのが自分で分かる。顔なんて火が出てきてもおかしくない位熱い。

オレ様は硬直したまま宝具人間を見つめることしかできなくて。




は……恥ずかしいじゃねーか!!!!




それにしてもよく恥ずかしくもなくペラペラとそんな事が言えるものだと内心感心する。

さすが宝具人間。


「だからオレはお前といる。それが自然の成り行きだ」

「ふん、なーに偉そうな口利いてんだ。残念ながらオレ様はこれっぽっちも嬉しくないんだかんな!分かったか!」

「威張るな」

「るせーっ、覚えてろよ宝具人間!この屈辱、倍にして返してやるからな!!」


黒い翼を広げて荒く飛び去ると、オレ様は一直線に自室へ駆け込んだ。




提供:確かに恋だった

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