封神演義
□好きかも、しれない
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いつものように、オレ様は空から地元の光景を眺めていた。
民たちの活気ある笑顔を見ていると、武王になったちぃ兄を誇らしく思えてくる。
何てったってオレ様のちぃ兄だからな。
一人優越感に慕っていると、背後から聞きなれたヤローの声が俺を呼んだ。
振り返ればあの何を考えているかわからない瞳。
「宝具人間……ンだよ、なんか用か?」
「絞まりのない顔だな」
「悪いかよ。オレ様は今、民の生活ぶりに幸せを噛み締めてんだ」
そう答えてやると、宝具人間は無表情のまま「そうか」、とだけ呟いた。
相変わらずな奴。
「お前はないのかよ。見ているだけで幸せになれるようなもの」
「……母上」
「へぇ」
「それとお前」
「ほぉー……って、オイ!俺様って何だよ!?」
慌てて振り返ると、宝具人間は不適に笑っていた。
もしかしてからかわれたのか?
「おい、馬鹿にすんなよテメェ」
「何をだ?」
「何をって……その、今の」
言い淀んでいると、微かに柔らかい感触が俺の頬に触れた。
驚いて少し後退すると、アイツの視線と俺の視線が絡み合って……。
「隙だらけだ」
「……っるせぇ」
すると、さっきとは違った表情を俺に向けてくる。
きっと自分自身でも気付いていないだろう。
提供:確かに恋だった