ポップン
□the beginning
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満月の日は、朝から獣の姿になってしまうのが俺の体質だ。
ハッキリいってその姿を見られるのは好きじゃない。だから満月の日は一人で放浪することにしていた。
だが、今回は一日じゃ帰れそうにない予感がする。
(帰りが遅いって、あの二人心配するかもしれないっスね)
慣れない人間界に来たは良いけど、案の定迷子になってしまったのだ。そんなこと恥ずかしくてあの二人に電話できない……というより、絶対笑われそうだから言いたくないだけなのだが。
(まいったっス……)
○the beginning○
人間界に着いたのは朝日が昇る前。その時にはもう雨はシトシトと降っていた。
『ツン』と静かな冷たさが、獣の身に染みる。寒さに震える身体を温めようと、俺は辺りを見回した。
雨粒をやっとしのげる程度の屋根の下に、古ぼけた段ボールが一つ。ジットリと湿ってはいるが、このまま濡れているよりはマシだろう。
俺は段ボールの中へ滑り込んだ。
『クシュン!』
なんだろう、頭が朦朧としておまけに目は霞んで周りが回転する。
少しだけ目を閉じようか。
ほんの少しなら……。
(大丈夫っスよね)
長時間雨に濡れ、寒気の中を彷徨っていたせいか、俺は何十年ぶりかの熱を発祥していた。
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