創作BL
□水の底には
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夏祭りの陽気な雑音が微かに聞こえてくる森の中。
彼は彼の為に光を求め彷徨っていた。
幾度も転んでは立ち上がり、弱々しい足取りで森をかけていく。
あの人に逢いたいその一心で走り抜ける。
光はどこにいるのだろう。
あの人の下へ導いてくれるだろうか。
不安だけが彼を渦巻いていく。
彼は願った、月の光を浴び。
彼は叫んだ、力のかぎり。
光は輝く水の底。
そして見つめる視界に彼はいた。
溢れる思いを押し込めて、彼は手をのばす。
愛してる。
愛してる…。
愛してる……!
水の底には淋しい夏の音。
光は小さな雫をこぼし、空へと散っていた。
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