創作BL
□水の底へと
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まどろみを漂っていた。
全ての感覚が感じられない。
俺はこの空間と同化し浮いている。
ここはどこだろう。
薄暗い水の中のようだ。
不意に、右腕を伸ばしてみた。
一筋の光が降り注ぎ、俺のカラダをてらしだす。
どこか懐かしい穏やかな温もり。
俺は、右腕に力を入れて光を求めた。
もっと感じていたい。
もっと浸っていたい。
俺はいつしか力の限り両腕を伸ばして光を求めた。
何度も何度もすがった。
それなのに、求めれば求めるほど光は消えかけていくのだ。
ついに、その暖かさは冷たい水の中へ消えた。
感覚は少しづつ押し寄せ、俺のカラダに現実の重みが戻ってくる。
光は、俺の腕の中で息絶え静かな……それは静かな幻のように存在していたのだ。
涙が溢れて止まらない。
冷たくなる光を抱き寄せ、俺は闇に落ちていく。
暗い暗い……水の底へ
沈んでいく。
森は二人を飲み込んだ。
求めたカタチが求めた形。
祭りの森に夏の唄が響いていた。
END