創作BL
□カムバック青春!
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その時は突然としてやって来た。
オレの可愛い恋人・桜屋巽(さくらやたつみ)が海外に引っ越してしまう事になり、突然のお別れ宣言をされたのだ。
「海外に引っ越すからって別れる事ないと思うんだけど」
オレは不満顔で相手に訴えている。
まだ夏の熱さが続く9月。
クーラーの無いオレの部屋は、蒸し暑くてちょっとの事でもイラついてしまう。
「真人(まさと)とは遠距離恋愛なんて無理だよ」
「無理ってなんだよッ?オレが浮気するとでも思ってんのか?」
「それは無いと思うけど、音信不通で自然消滅なのはありえると思うよ?」
「んだよ、ソレェ!?」
肩をすくめている巽を恨めしく見て、オレは軽くケツを捻ってやった。
「痛っ!」
反撃してくる腕を押さえながらオレは出会った頃や楽しかった事、ケンカした事を思い出していた。
オレたちは中一の時に知り合ってから、何だかんだで中三の時に付き合いだした。
二人とも始めは何も知らなくて、気持ちの伝え方もSEXの仕方も分からなかった。
ケンカして泣かせてばかりだったかもしれない。
「何だかんだやってるウチに一年半余り……オレたちも高二なんだよな」
思い出しているウチ、無償に巽が恋しくて強く抱き締めた。
離したくない。
どこへも行かせたくない。
その想いだけが頭をよぎる。
「別れるなんてしない……」
「真人?」
オレは巽の首筋に顔を埋めて、だらしない顔になっているのを隠した。
こんな顔は見せたくない。
「一緒に卒業したかったなぁ」
巽が静かにオレの肩を抱いて慰めてくれる。
まるで子供をあやすような仕草だけど、いつもこの優しい温もりがあった。
「卒業したらオレ、働いてお前と暮らせるようにする」
「真人」
「一緒に卒業出来なくてもオレたちはまた巡り合えるんだ。だから別れるとか言うなよ」
「……真人。――…うん、もう言わない」
お互い強く抱き締めあった。
この熱を忘れないように。
・・・・・・・・・・・・
それからオレは卒業して就職して金を貯めて……そう、帰国した巽と同棲するはずだった。
だったのだが……。
「ちょっと待て!オレは聞いてないぞッ」
「聞いてないってしょうがないよ。僕だって成長期なんだから」
「だからって165の奴が180の筋肉バカになって良いと思うのか?!」
可愛らしかった恋人は、一年半という間に長身マッチョマンに変身していた。
どこから見ても筋肉!
エビバディ パッション!あっ、発音が違う?
「って、違う違う!脱線するとこだった!」
「真人?」
心配そうに首を傾ける仕草が全然可愛くない。
敬愛すら沸かないのも厳しいところだ。
「悪いが別れよう」
「えぇッ!何言ってるの真人!?」
「……ってかさ、お前は変わり過ぎたんだよ」
そんなぁ、と落ち込む巽はどこか哀れにも見えるが、ある意味ギョッとする程オヤジ風が吹いている。
吹いているだけならまだ良いが、そのウチ臭いまで出てきてはたまらない。
「そーゆう訳で、あばよ!思い出をありがとう!」
「そ、そんなぁ!カムバーーーーッッック 真人ぉーーーー!!」
こうしてオレの純愛は幕を閉じたのであった。
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