創作BL

□危険なアルバイト
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春……
桜はまだつぼみ。


開花にはあと一週間はかかるとニュース番組のお姉さんが言っていた。


僕の通っている私立航布(こうふ)男子高校では、今日から春休み。僕は新学期から高校二年生になるのが憂欝だった。

大人になるのがたまらなく恐く不安だから……。
誕生日もキライだ。

僕はまだ子供でいたい。



その日の午前中は部屋でゴロゴロ。

母さんも父さんも朝から夜遅くまで仕事に行っていていつも僕は一人で家にいた。

一人っ子で友達はいない。いないというより、遊ぶのや関係を築いていくのがおっくうなんだ。それでも学校ではイジメに遭ったことが一度もなかった。
逆に人気者といって良いのか分からないケド、よく手紙や告白をされる。同性から告白されて、どう対応したものかためらう毎日は少なからず苦痛だ。

これは母さんに似てしまった顔や身長のせいだと諦めている。

158pの女顔、童顔は女子のいない男子校では良いターゲットなのかな。小・中と共学だったけど、女子からは善き友達とか中性体として慕われていた。


……と、突然呼び鈴が鳴った。


「鈴本さんのお宅でしょうか?」


インターホンに出ると、若くてなかなか格好いい男がモニターに映った。


「そうですけど、どちら様ですか?」


男はパッと営業スマイルで微笑んだ。


「もしかして君は和真くん?」
「え?そうだけど……」


知り合いかなっと男の顔をジッと見たが、初めて見る顔だ。


「とりあえず中に入れてくれない?それから話そうよ」
「う、うん……」


僕は首をひねりながら、もしかして父さん達の知り合いなのかもしれないと思い、渋々ドアを開け男を入れた。

近くで見ると長身でかなりの男前。スーツの上からでも想像出来る程の筋肉だ。


「あの、今父さんも母さんも仕事でいないんだけど……」
「それは好都合だ」


言って家のなかへ入り込んでくる。
僕は慌てて男の前に立ちはだかり動きを止めた。


「ちょっと、何勝手に上がり込んでんだよッ。あんた一体……」


口の前に人差し指を押し当てられて僕はたじろいだ。

「まあまあ、商品を見てもらいたいだけだから」
「セールス!?」


男はまたしても営業スマイルで僕の肩を抱えリビングに入った。そしてテーブルにカバンを置くとおもむろにそれを開けた。


「メールしてくれたでしょ?短期・高収入アルバイト!」
「え?うん、……したコトはしたけど……僕は普通の仕事に登録したんですけど?」


そう、僕はこの春休みにお金を貯めて父さん達に温泉旅行をプレゼントしようと考えていたんだ。
だからとあるサイトで仕事登録したんだけど、まさかこんなセールスで押し売りだなんて聞いてない!


「まあ落ち着いて。俺は美月っていうんだ、ヨロシク和真くん。」


開けたカバンから見たことのない物体を次から次と出し、一つを手にして僕の目の前に座る。


「いいかい和真くん。君にはこの商品を試してもらいたいんだ。報酬は一商品に対して二万出す」
「うそ!?そんなに?」
「最初は俺が使い方を教えるから難しいコトはないよ。やるかい?」


僕は二万という言葉に魅了され、すぐさま了解してしまった。


「それじゃ、和真くんの部屋へ移って教えようか」


僕は美月を自分の部屋へと招き入れた。





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