ケロロ軍曹
□966警報!
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その日、ケロロの部屋では『MOMOHIKI大会in日向家』なるものが人知れず開催されていた。
メンバーはケロロ小隊五人衆(全員擬人化!)と日向家代表・姉&弟である。
意気揚揚と張り切る小隊とは裏腹に、突然強制参加させられた二人は部屋の中央に吊されたモモヒキを呆然と見上げてうなだれていた。
ラクダ色のモモヒキが風もないのに揺れている。
「それではMOMOHIKI大会in日向家を開始するにあたって我輩から一言。えー、本日は晴天なり晴天なりぃ……」
「ちょっと待ちなさい!一体なんだっていうのよ!?私たちに何をしろっていうわけ!?」
「そうだよ軍曹ぉ。突然参加しろって言われても僕たち何が何だか……」
納得していない二人がケロロに詰め寄る。
「ゲフフフフフ」
こうなることを事前に計算していたケロロはニヤリと口元を歪め、タママ二等に合図を送る。するとすかさずタママが二人の前に躍り出てニッコリ微笑んだ。
「僕が説明するですぅー♪まずはあのモモヒキを囲むようにみんなで輪になるんですぅ。で、そうしたら音楽に合わせて笑顔でパントマイム。音楽が止まったと同時にジャ〜ンプ!最終的にモモヒキを奪い取った者が優勝っていうゲームですぅ〜。まっ、ボクには勝てないと思いますけどね〜」
一気に言い遂げたタママは清々しいまでの汗を散らすと、ポカンとしている二人の前で拳を力強く握ってみせた。
さも、誇らし気である。
「ーーって、そーじゃなくて私が聞いてるのは」
「おもしろそう!イス取りゲームの要領にそっくりだね?あ、優勝したらもしかして何かもらえるの?」
「ちょっ、冬樹!?」
「ちょっとだけやろうよ姉ちゃん、ね?」
冬樹の瞳が星を散らしたように輝いている。
それを見た夏美は肩を落として深いため息を盛らした。こんな生き生きとした彼を誰が止められるというのだろうか。
「優勝者には一日王様の権利が与えられるのでござる。参加者の一人を指名して一日自由にしても良いという」
「へぇ〜、うわぁ〜、やりたぁ〜い」
「冬樹殿は乗り気でありますなぁ」
「冬樹ぃ……」
もはや完全に彼の耳には自分の声は届かないのだと夏美は悟った。
(こうなっちゃうと頑固なのよね、この子)
後に彼女はこう告げていた。「私は弟をぶん殴ってでも連れ去るべきだった」と……。
「んもぉ、しょうがないわね。よーしっ、そうと決まれば手加減はしないわよ?私が勝利してアンタをこてんぱんにコキ使ってやる!いいわね、万年ボケガエル!!」
「ゲロゲロゲロゲロ。望むところであります、日向夏美殿!」
そんなやり取りを静かに見ていた赤ダルマことギロロ伍長は、内に秘めた闘士を煮えたぎらせずにはいられなかった。
(夏美は……夏美は誰にも渡さない!!夏美ぃーーーーっっっっ!!!!)
一人空回りしていることは秘密にしておきましょうね。
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