◇風を呼ぶ砂漠の王
□第一幕
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「しかし、それでは民も納得しますまい…どんな理由で…どんなお考えでいらっしゃるのですか?」
全てが映るほどに磨き上げられた大理石の床。
その上を歩む人間が二人。
一人は細身で背の小さい、短くて柔らかそうな銀髪の少年。
白地に青の模様の入った、祭礼服のようなものを着ている。
服の模様の色と同じ色の瞳を右隣を歩くもう一人の人間に向けて、忙しく話しかけていた。
話しかけられている人間は悠々と歩きながら、煙草をふかしている。
少年の話を聞いているのかどうかは、表情から見ることはできない。
切れ長で、真っ赤な瞳を薄く開けて、靴音を響かせることに集中しているように見えた。
「…聞いておられますか?」
少年は足を止めて問いかける。
「ん?あぁ」
少年の問いに応えた声の低い人間は青年で、黒いローブを纏っている。
その下には、軽装ながらもしっかりとした鎧。
腰に巻いてあるベルトには、針のようなものが何十本も固定されている。
「理由?考え?」
男は少年を振り返る。
「俺の考えは、お前には理解できないよ」
男は少年から目線を外して口許だけで微笑む。
「理由はね、簡単。
俺が、この国の王だから」
男は、煙草を大理石の床に放った。