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□残念な男共のくだらない日常
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うららかな日差しが射し込む穏やかな午後。鳥は心地よくさえずり、開け放たれた窓からやさしい風が頬を撫でる。
いやいやバーチャル世界だろ?と思った方。
携帯世界にもうららかな日差しとか鳥とか風とかは存在するのである、突っ込んではいけない。
ともあれそんななか1人、窓辺で午後を楽しんでいる者がいる。ジュマロである。
いかにもおっさんらしく、緑茶をすすり、みたらし団子を頬張りながらのほほんとしていた。
ジュマロが最後の団子の一串を食べ終えたとき、玄関のチャイムが鳴った。
誰だろうと首をかしげつつジュマロは席を立った。


「ジュマロ!聞いてくれよぉっ!!」
突然の来客に驚きつつジュマロが玄関を開けたとたんに、奇声のようなものをあげて勢いよく1人の男が飛び込んできた。
その勢いにジュマロはビックリした。
ビックリして思わず
思いっきり扉を
閉めた。
その瞬間、スイカをぶち割ったような凄まじい炸裂音が響く。
「っぁいっだぁっっ!!」
男の悲痛なシャウトがこだまする。その声にジュマロは聞き覚えがあった。
再び、扉を開けて声の主の姿を確認する。
全体的に緑のカラー、メガネ、半ズボン、しまりのない顔。
「なんだエロゴンか」
「エロゴンだよ!!!ジュマロひどい!!」
そう言って涙声で叫ぶエロゴン、ジュマロの閉めた扉に頭を思い切りぶつけたらしく、額にはうっすら血が滲んでいる。
「いや…だっていきなり入ってくるからなぁ?」
「インターフォンのモニターあるじゃない!!確認してよね!!」
「そんな文明の利器には頼らん!!」
「携帯電話というテクノロジーの塊のくせして何言ってんのあんた!!」
「うるさいなぁ」
少々正論過ぎる突っ込みを受けて、顔をしかめながら、まあ入れ、とジュマロはエロゴンを招き入れた。痛そうに額をさするエロゴンに若干の罪悪感を覚えたが、なかったことにすることにした。

ジュマロの家はリビングと畳敷の和室、それとキッチン、トイレ、風呂と独り暮らしにしては充実した構造を持っている。
ひとまずエロごんをリビングの椅子に座らせて、擦りむいた額を手当てしてやった。
「しみるうぅぅ」
「我慢しろ!」
ぺたりと絆創膏を張り付けてやって、ジュマロも向かいの椅子にどかりと座った。
「んで、今日はどうした?」
その問いかけを聞いた瞬間、エロゴンは弾かれたように立ち上がった。
「聞いてくれよジュマロっっ!!!!」
「お、おぉ?」
エロゴンはがっしりとジュマロの肩をつかんで、ブンブンと揺すった。
「 ひっどいんだよ!!ひどいんだよぉっ!!」
「おっ、おち、おちっ」
「なあっ!!酷いんだよ、酷いんだよミルキーがさぁ!!」
「落ち着けって言ってるだろ!!」
力任せに体を揺すぶられ、ぐわんぐわんとする頭を、どうにか押さえつつジュマロは怒鳴った。
怒鳴られてエロゴンはしゅんとする。
「お前ミルキーとまたケンカしたのか」
「…うん」
ミルキーと言うのはエロごんの彼女の美人携帯で、エロゴンはなにかとそのミルキーと痴話喧嘩を起こす。
ケンカの回数は二度三度では収まらず、まぁ大抵はエロゴンが負けるのだが、その度ジュマロの家がエロゴンの傷心を癒す駆け込み寺となっていた。
「懲りないなぁ…毎回毎回」
「俺だってね!ケンカしたくはないですよ!?」
でもミルキーが怒るんだもん、とエロゴンは口を尖らして不服そうに文句を言った。
「今回は一体何やったんだ」
「それがさ、今年もまた夏がやって来たわけだろ?だから海かプールに行こうよってなってさ…」
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