キリ番・捧げ物

□みそすーぷ
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「片倉せんせー、お昼ご飯一緒に食べよ」

有無を言わせず二人分の弁当箱を片手にパタパタと駆け寄る朱色の影。人懐っこい笑顔で大きめの弁当を差し出してくる。
こいつのお蔭で昼飯代がういて助かると言う前に、毎日作ってきてくれる優しさが嬉しくて堪らなかった。

「いつもすまねぇな…」
「いいのいいの。俺様が好きで作ってるんだから」

好き………。
その一言が、俺の頭の中でグルグル回る。


俺はこいつが好きだ。
教え子である大切な生徒であるにも関わらず…まだまだガキだというのに……男であるこの猿飛佐助に恋をしている。
そんな事知ってか知らずか、入学してからこの3年間俺に良くくっついて来ていた。
昼飯は出前やコンビニ弁当だと知ればそれから毎日弁当を作ってくるようになったし、女子が喜ぶイベント事には同じように参加してチョコやらクリスマスプレゼントやらケーキやら普通にくれる。しかもちゃんと手作り。かなり美味い……。

だから時々思う。
こいつも、俺を好きでいてくれてんのかと……。勘違いだったら恥さらしもいいとこだが…。



「美味しい……?片倉せんせー」
「ああ…今日も美味い」
「よかったぁ。今日の煮物はね、昨日の夜から作って味染みらせたんだよ」

手間掛かる事も率無くこなす。

「……毎日、お前の作る味噌汁が飲みてぇな…」

ぽつりと昔ながらのプロポーズのような呟きを漏らしてみる。
ちらりと相手を見れば目を丸くしパチパチと瞬きを繰り返している。

すると、ふにゃりと実に可愛い笑顔を浮かべた。ドクンと、胸が高鳴る。

「なぁんだ、片倉せんせー味噌汁欲しかったの?じゃあ明日から持って来てあげるね。勿論俺様特製っ」


ガックリと思わず項垂れる……。
俺のドキドキを返してくれ…。


「ご飯粒ついてるよ?」
「あ…」

まぁ…卒業までは、今のままでもいいか。


END.
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