キリ番・捧げ物

□毎日味噌汁作ります
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桜も蕾を付け始めた3月。
とうとう、この時を迎えてしまった。

卒業式……。

猿飛を始め3年間共に過ごした生徒達を見送る日。この学校に来て、初めての卒業式。
お決まりの送辞や答辞、校長からの挨拶、一人一人に渡される卒業証書……壇上に上がる生徒を見ながら、あいつはああだったとか、今までの思い出がそれぞれ過ぎる。

壇上に上がる橙……猿飛佐助。
生徒でありながら、俺が想いを寄せている相手…。

初めて見た時から、惹かれていた。
夕焼けのような鮮やかな橙の髪、幼い笑顔、時々見せる大人びた表情……日を追う事に、俺の中で猿飛の存在は大きくなっていた。

壇上から降りる時、目があった。
ふわりと寂しげな笑みを浮かべ、席へと戻る。

………もう、毎日会えなくなる。


膝に乗せた手をグッと握り締める。


式が終わったら想いを告げよう。
嫌われてもいい……引かれてもいい……今日が最後だから。





式を終え、賑わう校内。
泣き崩れる者、胴上げされる者、直ぐに帰る者……俺も最後の別れを惜しみながらもみくちゃにされた。男女構わず告白もされた。それには、ただありがとうと返す。
俺の想い人はただ一人だから……。

「何処行きやがった……」

人混みの中、橙を探すも見当たらない。
あいつに限って直ぐに帰る訳がねぇ……。

………まさか…

いや、しかし……悩んでる暇などない。
俺は依然もみくちゃにされながらも、何とか逃れて指導室へと向かった。






「やっと来たー……って、酷い格好」
扉を開ければ窓際に座りクスクスと笑う猿飛を見付けた。やっぱり此処にいた……勘が当たってホッと息を漏らす。

「お前を探してる間にやられたんだよ」
「うん、此処から見てた」

深くソファーに座り乱れた髪を掻き上げ上着を脱ぎ、ネクタイを外す。だらしないなぁと隣に置いた上着とネクタイを手にし、ハンガーへと掛けてくれた。

「ねぇ、せんせー…」
「何だ…」
「俺様、もう卒業しちゃったね」
「……ああ」
「もうお弁当作ってあげられないね」
「そうだな」

そう……だから今、俺はお前に想いを告げるんだ。

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