キリ番・捧げ物

□嫌よ嫌よも好きのうち…?
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甲斐からやってきた武田の遣い。
政宗様の好敵手である真田幸村と、忍でありながらやたらと目立つ猿飛佐助。
遣いで来たのがついでじゃねぇかと思わせる政宗様達の暴れよう……。城を壊してくれるなよと深く溜息を漏らし、一人城下の様子を見に外へと出た。
すると、ふわりと現れた黒い影。それを横目で見つつ歩き進める。


「旦那、俺様も付き合っていい?」
「真田の面倒見てなくていいのか」
「あんな状態なのに見物してたって仕方ないし、あんたも放置してるでしょーが」

まぁ、確かに。
花火でも打ち上げてるかのような騒音を後ろに感じながらまた溜息を漏らす。

忍は好きじゃねぇ……。特にこいつは。
腹の中を探られねぇような作り笑顔が特に気に入らねぇ。

「お前は目立ち過ぎる」
「そう?んじゃ変装しようか?」
「…いや、別に構わねぇ」
「どっちなのさ」

クスクスと楽しげに笑う相手に構わず町へと向かう。
こいつと居ると、調子が狂うが……どういう訳か居心地は悪くねぇんだよな…。



「相変わらず賑わってるよねぇ……」
「政宗様のお力があってこそだ」
「あっ!ずんだ餅屋!」
「お、おいこらっ……」

主従は似るものなのだろうか……。目を輝かせて屋台へと走る。ほっとく訳にもいかねぇから、俺もそちらへと向かう。

「へぇ……そっか、そうやって作ればいいんだね」
「砂糖の入れすぎには気をつけるんだよ」
「うん、ありがとうお姉さん」
「やだよ、お姉さんだなんて。ほら、もう一個おまけだよ」
「えっ!悪いよ〜。でもありがとね」

……なんだこの馴染みようは。
俺の存在など忘れているかのように、猿飛は甘味処をあちこち回っては作り方を尋ねている。
町の奴らも、警戒心なんて出しちゃいねぇ。寧ろ自ら猿飛に話し掛けている。

こんなふうに楽しそうに笑う猿飛は、初めて見た…。
これが本来の姿なのだろうか。

「旦那〜、ちょっとこれ持っててくんない?俺様大売り出しの呼び込み頼まれちゃって」
「は……?お、おいっ猿飛!」

真田への土産なのか、両手に乗せられた甘味の山。とりあえず向かいの茶屋に座って横に置くか……。
つか、お前忍だろうが……こんなに町の奴らに慕われて…何なんだ本当にこいつは…。全く理解出来ねぇ。



だが……こんな一面も持っていたんだということを知れて、あいつの見方が変わった事は間違いない。

「普通にしてりゃ可愛いんじゃねえか」






………………って、何考えてんだ俺。

「どーしたの旦那?」
「はっ!?い、いや、何でもねぇ」
「ほら、旦那も手伝って!野菜に関しちゃあんたの方が目利きでしょ?貢献してやって」
「お、おいっ!引っ張るな!」


二人が帰った静けさに堪えられるか不安になってきたが……今こうして傍に居るうちに、少しでもこいつを知りたいと思い始めていた。


男の欲が、出ちまいそうだな……




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