パレードが過ぎた朝に

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いつも迎えにくる時間に、キヨはこなかった。


そういえば、いつもの時間に合わせて起きるようになったから、寝坊しなくなってたな。


「もしもし、キヨ?今から行くよ」
『…ユウちゃん、おかえり』
「おう。キヨも、おかえり。寝てた?」
『うん』
「どうした?すごい声。風邪?」
『おれ、休む』
「え?」
『しばらく休むから』
「えぇっ、だいじょうぶなの?」
『ん、気をつけて行ってね』
「…おう。じゃあ帰り、寄るから」
『ううん、いい』
「そっか、じゃあ、ゆっくり休んで」


真夏とはいえ、朝の風は冷たい。川沿いをチャリで行くのは肌寒いくらいだ。
久しぶりに聞いたキヨの声は、元気なさ過ぎてこっちまで元気なくしそう。やっぱ帰りに差し入れでも持ってってやろう。




二日間だけのお盆休みを挟んで、久しぶりの部活の時間はあっという間に過ぎた。
初めて紅白戦で監督にアピールできる一年生の気合は半端じゃない。それにおれたちも負けるわけにはいかない。
泥まみれになったお互いの顔をみて、いよいよ今年も始まるんだと身が引き締まる思いだ。



反省会の最後、監督があごひげを撫でてから、口を開いた。

「それとな。今後はユタカ。お前、キャプテン代理な」
「は?」
「オダシマ、ユタカを助けてやってくれ」
「え?」
「わかったな。お前ら、ユタカについていけ」

いや、ぜんぜんわからない。

名前を呼ばれたおれたちだけでなく、全員が一様に戸惑う。

「全体を一番よく見てるのはお前だ、ユタカ。その視野があってこそ、チームが動いてる」
「いや、でもなんで」

もっとうまいやついるし、それこそオダシマのほうが。


でもそういうことでもなくて、ウチのキャプテンはイシカワキヨヒトだ。







監督が告げた言葉は信じられるものじゃなかった。


高校最後の年。


おれがキヨのとなりにいられる、最後の年。






ナシ、って言われたって。急に、そんな。







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