ICE CANDY BABY

□新しいイヤガラセ
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ホントあいつ、嫌い!からの流れで
***




家帰って着替えてランニングに行って、帰って風呂入ってメシ食って、そしたらまた汗かいたからもっかい風呂入って、着替えてチャリで出陣!


「いってきまーす!!」


いざミズサワんちへ!


家っつーか、あいつんちは畑のなかにポツンと建つ下宿だ。
いちおう、下宿人以外は立入禁止。
ってことになってるけど、管理人のおばちゃんは夕食の片付けを終えたら、9時くらいには同じ敷地にある自分ちに帰ってく。
部活で遅く帰るやつらも多いし、おれが紛れても気づかれない。

とのこと。


「おう、入れよ」
「おじゃましまーす!!意外とでかいんだなー!」


沢山のきったないスニーカーが脱ぎ捨てられた玄関を通り抜けた先の広い部屋には、でっかいテレビ。

その前に並んだ椅子に腰掛けて、ひとりの下宿人が声をかけてきた。


「ミズサワ、ともだちー?」
「おー、部活のやつ。フルダテ、茶は小さいほうの冷蔵庫な。飲むなら自分でとれよ」
「そーなんだー、フルダテくんっつーの?よろしくー!おれ和賀ね。あれだろ、今日のサッカー観に来たんだろ?」
「うん!ワガくんも、サッカー部?」
「いやおれは、ラグビー部。藤根工業の」
「おお!すげー強いとこじゃん!」


盛り上がってるおれらを横目に、ミズサワは部屋を出てどっか行ってしまった。

ワガくんいわく、下宿人は今んとこ10人くらいで高校はそれぞれバラバラ。みんな何かしらの運動部か、進学校に通うために、県内の各地から集まってきてる。

初対面だけど話しやすい、これぞスポーツマンって雰囲気の感じイイやつだなあ。


「フルダテくんも風呂行ってくれば?」
「あ、おれ家で入ってきたし」
「え、じゃあこのピョンピョンはねてんの、セットしてるわけじゃないんだー?」


おれの短い髪の毛をつまんで、ワガくんは不思議そうな顔をした。
ほっとけ、ただのくせ毛だ。風呂上がりはとくにひどくなるんだ!


「あはは!ほんとだ、ワックスとか付いてねーんだー」
「もー、離せって!」
「なにこれかわいー、触ってみるとサラサラー」


しつけーなあ!
後ずさってもすぐに椅子の背もたれにぶつかって、逃げ場がない。
近づいた体を離そうともがくけど、掴まれた右手がびくともしねー。
さすが藤高ラグビー部だ!


「ちょ、いい加減、離し…ッ」
「あ、ミズサワ」


おれの背後に視線を向けたワガくんの声を聞くと同時に、突然、視界が真っ白いものに覆われた。


「なにやってんだよお前ら」
「えーべつに?あっ、タオル外してあげてよミズサワ、しんじゃうってフルダテくん」
「ッブハ!…なにすんだてめー!!」


こいつ、人の顔に思いっきりタオル巻きつけやがった!


「なにやってんのって聞いてんの」
「てめーがなにやってんだ!ころす気か!」
「誰に向かっててめーとか言ってんだよ」
「まじで窒息するっつーの!ご丁寧に鼻も口も塞ぎやがって!アホか!」
「………」
「………なんだよっ!」


急に黙るとかなんだよ!逆にこえーよ!
白いタオルを両手でパシッと伸ばしたミズサワの目が笑ってない。


「サッカー、始まるよー」


沈黙をやぶったのはワガくんののん気な声だった。
そうだ、今日の目的はこれだ!


「ミズサワ、観ようぜ!」

風呂上りらしいミズサワは、チッと舌打ちをしてタオルでガシガシと頭を拭いた。
そうそう、タオルは本来そうやって使うものだぞ。


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