ICE CANDY BABY
□悟りの一つや二つ
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最初は、遠征三日目の朝だった。
オーストラリアの照りつける太陽の下で走り回って、くたびれきったおれは早々にベッドにもぐりこんだ。
一緒にもぐりこんできたヒサシのことは、きっちり蹴り落とした。
ふかふかのベッドでぐっすり眠り、なんだかあったかいなぁ、いいにおいするなぁ、と、目を覚ました、翌朝。
抱き合ってるおれとイシカワ先輩は裸だった。
「うわああああああ!!」
「……ん…?」
「えっ?!な…っ、な、なんですかこれっ?!」
「………」
「ちょっ、センパイ!は…離して!」
ほとんど寝ぼけた声で「なんだよ…」と呟きながら、イシカワ先輩はおれの頭を抱き直した。
え?!ウソ?!なんで?!なにこれ?!夢?!
「やめて!起きて!起きてくださいっ!」
「……んー…」
「んー、じゃないっす!や、やばいですって!なんですかこれ!!」
肩を掴んだけど、構わずにぎゅうっと抱きすくめられて身動きができない。脚まで使われて、まるで抱き枕状態だ。
「キヨさんってば!!」
「……うるさいな…」
うるさいな、じゃねー!
めちゃくちゃに手足をバタつかせると、背中に回された腕がようやく離れた。バッと起き上がって自分の体をぺたぺた触り、異常がないか確認する。かろうじてハーフパンツ履いてはいるけど、寝る前に着たはずのTシャツ、どこいった?!
「べつに、なんもしてねぇよ…」
「さ、されてたまるか!!」
先輩相手だってこともつい忘れてそう叫ぶと、キヨさんは機嫌悪そうにむくっと体を起こした。身に付けてるのはパンツ一枚だけだ。
信じられない状況に、頭がうまく働かない。
え、ウソだろ、まじで、なんなのこれ?!
なんもしてねぇよ、って言われても、だったらこの状況は一体何なんだ!
いやいやいやありえない!!
訳もわからず固まってしまったおれの体は、再び伸ばされた腕に包まれて、真っ白のシーツに押し倒された。
ゆっくりとまばたきをした鋭い眼が、静かに近づいてくる。喉がこわばり、声が出ない。緩く抑えつけられた手首がやけに熱い。首すじを撫でた吐息に、心臓が音を立てて跳ねた。
ユタカ先輩の顔と、わんわん泣くフルダテのブサイクな顔が脳裏に浮かぶ。
思考はそこでプツンと切れた。
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