ICE CANDY BABY

□どんどんこわくなるよ
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 ラブレターヒストリー こんなことは言いたくないのさ
の裏側の話。

***







失恋して髪を切る。

なんてベタすぎる行動、どこかで聴いた古い歌にあったような気もするけど、くだらねーってバカにするのは大間違いだ。
だって実際切ってみて、気分が超すっきりしてる。

短く切った髪は、まぶたにかかる煩わしさもないし首元も涼しいし、すごく調子いい。

風呂の後、ドライヤーしてもらわなくてもすぐ乾く。部活の前、結んでもらわなくたってぜんぜん問題ない。
だからフルダテがいなくたって別に、平気になったんだ。

たいして長かったわけじゃないけど、指で梳いてもらうのが心地よかった。
ついうとうとしてしまい、ふと目を覚ますとフルダテも一緒になってベッドにひっくり返ってる。
すげー寝相に思わず噴き出して、一生懸命ひっぱってなんとか布団に押し込むけどすぐに転げ落ちそうになるから、背中に腕を回してぎゅっと抱きしめる。すると、フルダテは何かふにゃふにゃ寝言を言いながら、おれを腕の中に引き寄せる。体格なんかほとんど変わらないから、どっちが抱きしめられてるんだかわからない。おだやかな呼吸の規則正しいリズム。伸ばした髪をゆっくり撫でられて、自然とまぶたが落ちていく。

そりゃあ、お互いの気持ちとか関係性とか、はっきりと確かめ合ったわけじゃない。だけど、そんなの、わかるだろ?わざわざ言わなくたって、伝わるはずだ。

そういうふうにして眠るなんでもない夜が、おれはとても好きだったんだ。


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