ICE CANDY BABY

□すばらしすぎる!
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友達としゃべりながらあっさり去っていったミズサワの背中を見送り、たっちゃんに椅子に座らされて昼飯食った。
カレーかなんかを食ったと思うけど、味なんかさっぱりわからない。口に入れるはしからボタボタこぼしちゃって、みんなに笑われたことだけはぼんやり覚えてる。

そのあとどうやって教室まで戻ったんだっけ、うーん、廊下でカキタさんとすれ違って声掛けられたような気がするけど、えーと、あれ、ちょっと待って。
あいつ、好きだって言ってた。







え。

え?

嘘だろ?

好き。

好き?

好きって、えっ、なにが?




いやいやちょっと待って。
違うよ、ぜったい嘘だよ。

ありえないよそんなの、無いってまじで、好きな子はフルダテだよって、ミズサワがそう言ってた。


ミズサワの、好きな子は、おれだって!!


「うわあああああああああああああああああ!!!」
「うっせーよボケ」
「痛ってえ!!」

こんな思いっきり、ゲンコツ落とすか普通?!好きな子の、頭に!!

「やっぱ嘘なんだああああああぁぁぁぁぁあああ!!!」
「嘘じゃねーよカス」
「だって!!す…好きとか、そんなの、嘘だよ!!」
「嘘じゃねーっつってんだろ。いい加減にしろよな」


ふわふわしたまま部活を終えて、ミズサワと並んでチャリこいで、こんなやりとりを何度も繰り返してるうちに下宿に着いた。
ついてくんなバカって言われたけど、帰り道は同じなんだからしょーがない。

「おい、なんでお前までチャリ降りてんだよ。さっさと帰れよ」
「え、いいじゃん、ちょっと寄るくらい」
「やだよ」
「なんで!」
「だってやだもん」

ヤダモン、じゃねーよカワイイなちくしょう!!
思わずくっつこうとしたらサッと避けられて、目の前でピシャリと玄関を閉められた。

「オイ!なんでだよ!いいじゃんべつに!」

慌ててドアに縋りついたけど、ミズサワが鍵をかけるほうが早かった。

「ごめんってばー!もうくっついたりしないからさぁー!」
「うっせーなでかい声出すな。まっすぐ帰れよ、じゃーな」
「えっ、ちょっ、待って!開けろよ!開けろってばー!!」

叫んだのもむなしく、さっさと遠ざかってくミズサワの影が磨りガラス越しにぼんやり見えた。


あーあ、もう、何なんだよあいつ!!
やっぱりおれをからかってるだけなんだ!!
好きとか、やっぱり、嘘なんだ!!


…でも。
昼休みの廊下で、あいつはたしかに言ったんだ。

好きな子。

おれの好きな子はフルダテだよ、って。


ミズサワの、好きな子は、おれだって!!


「うわああああああああああああああああぁーー!!」
「ヒロ、なにしてんの」
「あっシュンちゃん…、おかえりー…」
「あはは、またミズサワとケンカでもした?」
「わかんねーけど、なんかあいつイジワルするんだよー」

シュンちゃんに続いて中に入る。
ガリガリ君の新作いちご大福味を食べつつ、そっちは文化祭いつなのーとか、こないだの試合どーだったーとか話しながら下宿のみんなとのんびりしてたら、風呂入ってたらしいミズサワがタオル片手に戻ってきた。

「………なんでフルダテがいるんだよ?!」
「ミズサワもアイス食う?うまいよ!」
「っ、なんでいるんだって聞いてんだよ!帰れっつったろ!」

なんでって言われても。
昼休みの廊下でミズサワが言ったこと、おれはたしかに聞いたんだから。
逆になんで、帰れなんて言われなきゃいけないんだ?

「そーゆうイジワル言うなよ、ちょっと寄っただけじゃんケチ」
「ふざけんなこのバカ!」


キッと睨みをきかせたミズサワは、そのまま二階へ駆け上がっていってしまった。
まずい、部屋に立てこもる気か?!逃がしてたまるか!!
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