ミルトニア

□ひみつ
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「心配しなくても人間には見えねぇよ」


首筋にくっきり残る2つの傷痕。それは吸血鬼に血を吸われたという印。


「え、そうなの!?」

「あぁ」

「…でも私には見えてるよ?」

「ククッ、それはまぁ…吸われてる本人だしな。
それに人間には見えないとは言っても俺らが特殊な力を使ってるわけじゃない。
俺らはお前らの思い込みを利用している」


とかなんとか話された気がする。

今まで傷痕について人に問われたことはなく、確かに見えないのかもしれない。

それでも見えている私は気になってしまうんだ。



だから目立たないように絆創膏を貼っているこの頃です。

まぁそれがさらに目立たせてるようですが。

「最近絆創膏必ず貼ってるね」

「え、あ、うん…まぁ」

「…キスマークだったりしてっ」

「ななななな、ちが、虫にささっ」

「はいはい」


やっぱ外そう、と絆創膏を半分くらいまでめくった時。
ふとまわりが陰った。

見上げれば、ばちりと先輩と目が合う。

この先輩、かっこいい、仕事は出来る、運動神経もいいと評判な方。
さらに厳しい雰囲気にもかかわらず、顔いっぱいで笑うところとかに惹かれるとかなんとか。

そんな先輩が私をまじまじと見つめていました。


「せ、先輩!?」

「はは!これ…マジで虫さされか?すんごい赤いな。あんまひどいようなら病院行けよ?」






そう言って去っていく先輩の後ろ姿が忘れられない。



「お前ら人間は、吸血鬼なんてもんを信じてはいないだろう。
だからそこに傷痕があったとしても、牙の跡とは思わない。いや思えねぇんだ。
そこに俺らはつけこんで、傷痕を他のやつらには見えないようにしてる。
もし傷痕が見えるやつがいたら、そいつはそこに傷痕があってもおかしくないと知っている者ということだな」








ひみつ
(知られてはいけない事)










(ようするにお前と同類か、俺と同類…だ)














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