ミルトニア
□涙
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2人で観ている映画。
涙脆い私はクライマックス近くにて号泣。
もはや視界が滲んで画面が見えない。
そんな私に彼は軽く引いているらしい。
「…どうして泣く?」
「うえ?だって、切な…切なかったじゃない」
「切ないねぇ…」
どこか腑に落ちないらしい。
あそこがこうであれで泣けたと語っても反応なし。
頬杖ついて冷めた目で画面を眺めている…冷徹ドS男め。
「やっぱわかんねぇな」
「…泣け、ないの?」
「ん?」
「泣かない、のか、泣け…ないのか」
グスっとなりながらも言葉を絞り出す。
これは大切なことだ。
もはや映画はクライマックスを終えエンドローム。
ちゃんとは観れなかったけれど仕方ない。
彼の視線が画面からゆっくりと私に移った。
「わかんねぇ…考えたこともないしな…」
きゅっと瞼をつぶれば頬がさらに濡れていった。
「ひやっ…!」
そんな頬に違う感触。
っていうか、
「舐め!?」
息がかかると言ってもいい至近距離。頭はがっちり拘束されてる。
「ただ…お前が泣いているのは…」
ほんとに聴こえるか聴こえないかのような声で言われた言葉。
「…なんか嫌だ」
涙
(気持ちが溢れる)
(だから泣き止め)
(そんな簡単には…)
(じゃぁ頂きます)
(!?)