ミルトニア
□不安
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彼ら吸血鬼はどんな力を持ってるというのだろうか。
「たしか…チャームだよね?」
「あぁ」
「他は?」
「…」
そんなことを聞いてどうするんだ、とまさにそんな顔。
「えっと…ただの好奇心というか興味本位です」
彼はひとつ深い溜め息をおとし、口を開いた。
「別に教えてやってもいいが、お前の言う能力ってどうゆうもののことだ。
人間にないことやものを言うのなら、お前らより寿命が長いこともそうなる」
「あ」
こっちはものすごく大雑把に考えていたが、確かにそうだ。
「そうなるとキリがねぇ。知って使えるわけでもないんだ。なら、その時々に知っていけばいいだろ」
反論出来ない正論を述べられてはどうしようもなく、肩を落とした。
けどひとつだけ聞いてみたいことがあったりする。
だから能力について聞いてみたって訳。
というのもこの前観た吸血鬼の映画で気になったこと。
それは昔話とかでもいわれていることでもある。
「ひとつだけいいかな?」
彼は返事の代わりに私と目線を合わしてくれた。
「人を吸血鬼にすることって出来るの?」
空気が冷たくなって、彼の瞳孔が一瞬揺れた気がした。
出来るぜ、って返事が後ろから聞こえたってことを認識する頃には頭を傾かされて拘束されていた。
――コ ワ イ
そう思った自分に驚く。
牙が刺さる瞬間そんな風に感じたのは初めてだった。
確かにいつも血を吸われるのを拒んではいるけれど、それは恐怖からのものではなくて。
「ま、吸われたぐらいじゃ吸血鬼にはならねぇよ」
拘束を解かれた私はゆっくり彼と向かいあった。
いつもと変わっていない彼に、心の中で首を傾げる。
私は何に恐怖を感じたんだろう。
彼は私としばし目線を合わせた後に口角を上げた。
私を、ではなくて、自分を笑うように、彼は口角を上げた。
「悪かったな、」
頭に乗せられた彼の手は大きくて、私を無性に切なくさせた。
「何に謝ってるの?」
何も答えない彼の代わりにか、首筋の傷がほんの少し疼いた。
不安
(気になるよ)
(どうして何も言ってくれないの…?)