ミルトニア
□体温
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雨に混じるある生き物の声。
「あ゛ー」
これは暑い季節に近づいている時期の出来事。
最近あいつの様子がおかしい。
「あ゛ー」
絶えることなく発せられる言葉は苛立ちを含んだもの。
そんな彼に冷たく冷えた例の飲み物を差し出す。
「はいどうぞ」
「ん…」
一気に飲み干し置かれたグラスの水滴がつぅっと机に流れた。
彼の横に座り、麦茶に口をつけ喉を潤す。
「なんか力使ってどうにかすれば?」
そのまま干からびてしまうんではないかって思えるぐらいに死にかけている彼。
「俺自身にってのは少ねぇんだよ。まして暑さなんてどうしようもねぇし。しかもムシムシしやがる…」
「…吸血鬼って暑さと湿気に弱いんだね」
「お前は俺らをなんだと思ってんだ。人間よりかは確かに丈夫だが、基本はそんなに変わらない」
一呼吸おいた彼はさらに付け加えた。
「それに元々太陽は苦手だ」
「へー…だけど今の気温でそんなんじゃ、これからヤバいんじゃないの?」
本人も自覚しているようでぐっと押し黙ってしまった。
「…」
そろそろ扇風機の出番かなっなんて考えて、麦茶を豪快に一気飲み。
その勢いで軽く彼の腕に自分の腕が触れた。
「ごめ、」
言い終わるか終わらないかで私は彼に腕を掴まれた。
「な、に!?」
突然のことで固まってしまう。
「つめてぇ」
「……………あ……」
彼と私の体温の違いのせいで、彼にとって私は相当冷たく感じているらしく。
「なっ…!」
彼は私の手のひらを自分のほっぺにあて、さらにその上に自分の手を重ねた。
「当分これでいける」
「!!」
言葉にならない言葉に口をぱくぱくしながら、すぐにでも扇風機を出そうと決めたこの頃です。
体温
(あついのは気温のせいだけじゃない)
(いいもん見つけた)
(私がもたない…)