誰も知らない物語2 完全版

□6章 ハナダジムの戦い
9ページ/9ページ

「お姉ちゃん」
「ん?」
「大昔に会ったことない?」

ミズカは意味がわからず首を傾げた。一緒にいたエーフィも小首を傾げている。しかし、ヒナを否定することはしなかった。

「ヒナちゃんが、そう思うなら会ったことあるかもね」

ニコッと笑うミズカに、自然とつられて笑った。その後すぐに両親と再会でき、彼女と別れた。そして、十歳になった時、北風使いの話を知り、ヒナは自分の前世を思い出したのだ――。


「前世って?」
「北風使いの妹分だったのよ。本には書いてないけど、時々、前世の記憶が思い出されるの」

なるほど、それでミズカだけでなく、タカナオにも会ってみたくなったわけだ。

「最初は興味があったし、ミズカさんにも、また会いたかったから、北風使いの弟と旅をしてみようと思ったの。でもね、今はそうじゃないわ。リョウスケと同じ。あたしもタカナオと一緒に旅をしていて楽しいもの。それにリョウスケも心配だし……ね?」

ヒナは微笑む。タカナオとリョウスケは嬉しそうに席から立ち上がる。

「タカナオもリョウスケも逃げずにいるんだもの。あたしも向き合って行くわ!」

その言葉は、リョウスケの組織にいたという話も含まれている事に、二人は悟った。もう壁などない。むしろ、絆が深まった。

「客室に戻ったら、カスミさん達に今まで俺が通ってきた道を話す」
「でも……」

タカナオが、その話はまずいのではないかと、口を開いたが、リョウスケはニッと笑った。

「平気だ。お前らがいれば」

そう言われ、タカナオとヒナは顔を見合わせた。そして、笑顔を見せると大きく彼に頷いた。もう怖いものなどない。お互いを信じていれば、未来だって切り開ける。そう思いながら、三人は客室に戻って行った。


次の章へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ