誰も知らない物語2 完全版
□9章 悲しき現実と蘇る記憶
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「やっぱり、戻る!」
その頃タカナオは、もと来た道を走っていた。
「ダメよ。この間も言ったでしょ。君が行ったら大変なことになるのよ」
「後はお姉ちゃん達に任せようよ。あの四人、強いから大丈夫だって」
追いかけながら、ヒナとマサトが言う。ヒナが腕を掴むが振り払われた。
「強いとか関係ないんだ。大事なのは助けたいかどうかじゃないか」
「それだけで済むなら良いわよ。でも……、タカナオは世界を背負ってるのと同じなのよ」
「どうせ、三人でいたって敵が追ってきて同じことになる。違う?」
タカナオの言葉に二人は顔を見合わせた。たしかにそうだ。と、納得してしまったのだ。
「でも……」
「……リョウスケは僕の友人だよ」
マサトの反論を遮ってタカナオがハッキリと言う。マサトは思わず頷いてしまった。いつもライバルだが、ライバルだからこそ心配だった。ヒナも友人としてリョウスケを助けたい。
タカナオはニッと笑うと、スピードを上げた。
「くっ……」
「どうした。お前らの力はそんなものか」
戻って来ると、傷つき、地面に倒れたカスミ、ハルカ、ヒカリ、そしてタケシがいた。こんなにも大きく力の差があるのかと、驚いて声にもならない。
カルナの隣では意識の朦朧としたリョウスケが力なく座っていた。何も出来ず、その表情は悔しそうだ。
「冗談じゃないわよ。あんたさえいなければ、ミズカだって、タカナオだって、この場にいる全員辛い思いしないで済んだんだから……!」
やっとの思いで起き上がったのはカスミだった。歯を食い縛り、立ち上がる。それを見て三人は顔を見合わせた。そして、それぞれ倒れているままの三人の場所へ行く。
「あ、あんた達、何やってるのよ」
驚いた表情でカスミが三人を見た。
「ほう……。わざわざ戻って来るとは、仲間思いのとんだバカだな」
フッと笑うとカルナはカイリューを出した。そしてすぐさま破壊光線を指示する。カスミ達のポケモンはすでにボロボロで技を出せない。今の内に次のポケモンを出すのは不可能だ。ただ、溜まって放たれる光を見ているしかなかった。
「チルタリス、電光石火!」
「チル!」
その時だった。後ろから声がし、上空でチルタリスが電光石火でカイリューに突っ込んでいく。