誰も知らない物語2 完全版
□5章 初めてのジム戦、リョウスケの苦悩
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「でもおかしな話よね。案外、NWGがある組織だったりして」
「それ本の読みすぎだよ」
ヒナの発想に思わずタカナオは笑ってしまった。「そうよね」とヒナもつられて笑った。
――本の読みすぎじゃねぇし……。
ため息をついてリョウスケは二人を見ていた。
「見〜つけた。あれが北風使いの弟君らしいね」
そんな三人を空から見ている二人組がいた。一人は、ピジョットに乗り、もう一人はオニドリルに乗り、三人の様子を眺めている。
「お前は本部に伝えておけ。ここは私一人で十分だ」
オニドリルに乗った三十代ほどのメガネをかけた男性……リンクが、ピジョットに乗った二十代ほどの青年ジンにそう言った。
ジンはリンクに目をパチクリさせる。リンクは知らん顔だ。ジンがやりづらく感じていることを悟っているのだろう。それに邪魔をされては敵わない。そういう雰囲気でもあった。
ジンは、「了解」と少し嬉しそうに言いながら、ピジョットで何処かへ飛んでいった。
「さてと、仕事を開始するか」
メガネをかけた男性は、オニドリルに指示を出して地面に降りた。
「あれ以来、お姉ちゃんから連絡なかったって言ってたけどさ」
「ん?」
「敵も現れないし、捕まってたりしないかな……」
心配した表情でタカナオが言うと、リョウスケとヒナは顔を合わせ、困った表情をする。彼からすればかなり心配なはずだろう。
「教えてやろう。北風使いは捕まっていない」
すっかり暗い雰囲気になってしまった彼らの後ろから声がした。メガネをかけた三十代ほどの男性である。隣には、オニドリルがいる。
タカナオは、ごくりと息を飲んだ。彼らの目の前にいるのは間違いなく敵だろう。ついにある組織とご対面らしい。
「お前が北風使いの弟か」
そう聞かれ、額に冷や汗が出てくるのを感じた。彼の顔はひきつっている。
「ヒナ、タカナオを連れて逃げろ」
リョウスケの言葉に、タカナオは目を見開いた。
「行くわよ」
ヒナは冷静にタカナオの腕を引っ張り、逃げようとする。しかし、彼は拒んだ。
「リョウスケを置いて行くなんて嫌だよ!」
「冷静になりなさいよ。君が捕まったら大変でしょ! だから、君を逃がそうとリョウスケは……」
「違うな」
敵はニヤリと笑いながらヒナの言葉を遮った。タカナオとヒナは顔を見合わせると、怪訝な顔で男性を見つめる。