誰も知らない物語2 完全版
□5章 初めてのジム戦、リョウスケの苦悩
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「まあ、たしかに、その考えもあるだろう。しかし奴には、もう一つ理由がある」
「やめろよ」
リョウスケはリンクを睨み付けた。二人には、聞いてはいけないことだと、すぐにわかった。しかし、聞かなくてはならないことだとも思ってしまい、金縛りに掛かったように足が動かなかった。
「こいつはな……」
「やめろ!」
「こいつは……」
楽しむようにリンクは、リョウスケを見る。彼は顔を歪めた。おそらく次の言葉は、二人を大きく動揺させるだろう。
「裏切り者だ。……我々、組織のな」
タカナオとヒナの中で、何かが砕ける音がした。敵が何を言っているのか理解出来ない。
「やめろ……って……」
リョウスケはわかっていた。敵に見つかれば、必ず自分についてバラされることは。だから覚悟もしていた。喉が渇く。手には汗が滲む。
いざ彼らを前にすると後ろめたい気持ちで一杯になってしまった。
「もう一度言う。こいつは、我々組織の裏切り者だ」
リンクの二度目の言葉で、タカナオとヒナはやっと理解したようだった。こちらを見られている。リョウスケはタカナオとヒナの顔を見ることができなかった。しかし、このままではいけない。
自分の役目はタカナオを守ること。シャイルとの約束は必ず守ると決めている。
「事情は後で話す! お前らは逃げてくれ!!」
リョウスケは嘆くように言った。二人は、動揺しつつも、彼が組織に入っていたことがあるのには、何か事情があったのだと何とか理解した。そして、ハナダシティに向けて走り出した。
「ふっ。逃がしたところで、お前が負ければ終わりだな」
メガネをかけ直しながら、敵が言った。
「簡単だ。勝てば良い」
「今のお前では、俺には勝てない。複雑な気持ちのままではな」
リョウスケの言葉に、ニヤリと笑いながら、敵は返事をする。彼は、眉間にしわを寄せた。
「いけ、オニドリル」
オニドリルが前に出てきた。リョウスケは、ギュッと一つのモンスターボールを握ると投げた。中から出てきたのは、デンリュウである。
「頼んだぞ、デンリュウ」
リョウスケの言葉に、デンリュウは頷いた。
「デンリュウか……。まあ良い。オニドリル、電光石火だ」
まずはオニドリルが先行してきた。
「正面から雷パンチだ!」
物凄い勢いでデンリュウは、電光石火をしてきたオニドリルに正面から攻撃した。威力は強く、オニドリルは吹っ飛んだ。