誰も知らない物語2 完全版

□5章 初めてのジム戦、リョウスケの苦悩
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「さすが、リーグ優勝者の持っているポケモンは違うな」
「褒めたって何も出ないぞ」
「別に欲しい物などない。お前がこの私に捕まればな」

ニッと笑った敵に、リョウスケは思わず舌打ちした。敵は、「怖い怖い」と彼を馬鹿にする。

「デンリュウ、充電だ」
「組織に戻る気はないか? カルナ様なら、お前を歓迎するだろう」

充電をするデンリュウを横目に今度は勧誘し始めた。

「戻る気は、全くねぇな」
「シャイルとの約束だからか」
「な……」

その言葉に、思わず詰まった。ギリッと歯を食い縛る。

「お前とマルナ嬢は妙にアイツに好いていたからな……。あんな男なのか女なのかも不明な奴の何処が良いのやら」
「雷だ」

リョウスケは敵の言うことを無視し、デンリュウに指示を出した。充電をしていたためか、オニドリルはその一撃で倒れる。冷たい目で見ると、敵はオニドリルをモンスターボールへ戻した。

「次は容赦なく、お前を攻撃する」
「何故そんなに抵抗する。シャイルとは、一、二ヶ月しか共にしなかっただろう? 裏切ったところであっちが馬鹿だった事になる」

敵はリョウスケの前まで来た。最初からバトルをする気はなかったらしい。ただ彼を再び組織に入れようと交渉しに来たのだ。

リョウスケは何故そうまでして組織が自分を連れ戻したいのかをわかっている。シャイルを連れ戻したいからだ。

男なのか、女なのかわからないとは言うが、シャイルの噂をリンクを知っているはずだ。幹部となれば尚更、シャイルの正体を知っているはず。

「……お前、本気でバトルした事があるか?」

拳を握りながら、リョウスケが聞いた。

「何をわけのわからんことを……」
「俺は一度、あの人とバトルをした。それはシャイルさんをはじめ、信じられなかったからだ」

彼は最初、シャイルを信じなかった。組織にいる奴は皆敵だと思っていたからである。どんな理由であろうと、正体がなんであろうと信じるつもりはなかった。だから、仲間になる気も、協力する気も、全くなかった。

「だけど、バトルで知った。あの人の強さを……」

ある日、いきなりシャイルは、リョウスケに両親を助ける手伝いをしたいと言ってきた。彼はいい心地がせずに断った。しかし、どうしてもと言ってきたため、バトルで諦めさせようと思った。

リーグ優勝した自分が負けるはずがない。リョウスケはシャイルにバトルを申し込んだのだ。無論、リョウスケは本気を出していた。しかし、その時の勝利はシャイルに終わった。

「シャイルさんって、バトルになると無我夢中になるんだ。前が見えなくなって、そのせいかポケモン達との息もピッタリで。どれだけポケモンがシャイルさんに信頼しているのか、伝わってきた」

レベルは、リョウスケのポケモンの方が断トツで高かった。しかし、シャイルにはレベルが通用しなかった。いや、そもそもシャイルのトレーナーとしての腕が良かった。

自分の技は見切られ、サーナイトと息を合わせて向かってきていた。
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