誰も知らない物語2 完全版
□6章 ハナダジムの戦い
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「ここが……、ハナダシティの……、ハナダジム?」
タカナオ達一行は、ハナダシティのハナダジムの前にいた。タカナオが思わず聞いてしまったのは、ハナダジムに大きな行列が出来ていたからだ。
しかも、タカナオの記憶とは違う建物だった。パウワウのオブジェが目立つ建物から、ガラス張りのスタジアムのような建物になっていた。
「そ。まぁ、この行列は気にするなよ。どうせいつもの事だから……」
リョウスケに言われ、首を傾げる。いつものことを彼は知らない。
「ねぇ、パパ。今日はいつもより並んでるね」
小さい女の子が、行列からひょいと顔を出し、父親に話しかけた。
「あぁ。今日は、特別ゲストが来ているらしいからな」
自分の娘を見ながらニコッと笑った父親の言葉に、ヒナが反応した。
ふと過るのは二人の憧れの女性。それは紛れもなく自分の師匠達だった。彼女には、女の勘と言うべきなのか、根拠のない確信がある。目を輝かせてリョウスケを見た。
「お前、このまま突き抜けてみろ。大変なことになんぞ」
呆れた表情でヒナに言った。彼女は「わかってる」と言って男二人を引っ張り、列の最後尾へ並んだ。
「待てば良いのよ」
「おい、俺達のことを知ってる奴らに見つかったらどうすんだよ」
リョウスケはムッとした表情をつくった。タカナオは何のことだかわからず、首を傾げた。
「その時はその時よ」
適当な事を言うヒナに、リョウスケがため息をつく。
「何の事?」
いい加減、気になり、タカナオが口を挟んだ。ヒナとリョウスケは、顔を見合わせ、彼に苦笑いを浮かべた。
「カスミさん。お姉さん達に振り回されて、よく水中ショーをやるのよ。何度か、サトシさん達も呼ばれてゲストとして行ってるんだけど、そういう時、来てねって、カスミさんにチケットを渡されたことがあったの」
「そこで、サトシさんとヒナの師匠のトップコーディネーターが来たとき……。……来るって噂を聞きつけた奴らって、皆、憧れて来たトレーナーとかコーディネーターなんだよ。それがあって、リーグ優勝者の俺とグランドフェスティバルで優勝してるヒナのことを知ってる奴らが山ほどいて、かなり大変な目にあったんだ」
「あぁ……、なるほど」
タカナオは納得したらしく、ため息をついている二人に苦笑した。今まで、町を避けていたのもあり、言われるまで気づかなかったが、たしかに二人は凄いトレーナーにコーディネーターだ。そんな彼らが目立てば、当然話しかけられたり、もっと言えば、サインも求められたりする可能性もある。
「ちなみに、ヒナにファンが大勢いるから、俺はヒナのファンに紛れて逃げたけどな」
「酷いわよね。全部、あたしに押しつけるんだから……」
呑気なリョウスケをギロと睨む。ヒナにファンが多いということも、何となく納得した。彼女は、格好よくて可愛く、顔も良い。彼女の気が強く、短気な性格を知らなければ、女性でも男性でも寄ってくるだろう。