誰も知らない物語2 完全版
□7章 シャイルとミズカ
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「いただきます」
緊張しつつも、タカナオ、ヒナ、そしてリョウスケは、用意されたショートケーキを口に入れた。前に並んで座っているカスミ、ハルカ、ヒカリは美味しそうにケーキを食べている。
タカナオは、チラッとカスミを見た。まだハルカやヒカリはまともに話を聞いてくれそうだが、姉と親友だと言っていた彼女は、リョウスケに対してどういう態度をとるのか、全く想像がつかなかった。
「あ、あの……」
イチゴを口に入れ、飲み込むとリョウスケが三人に話しかけた。
「どうしたのかも?」
「いつものリョウスケらしくないわね」
ハルカとヒカリが目をぱちくりさせながら言った。リョウスケは一呼吸する。
「今から言うことに、驚かないで下さい」
真剣な顔つきになった。カスミ達は顔を見合わせる。リョウスケの表情以外に、タカナオやヒナの表情を見ていると、二人も真面目に黙って頷いている。
それを見ると、カスミ達はフォークを置いて聞く態勢になった。
リョウスケは少し躊躇するも、やがて決心して口を開いた。
「……俺、ミズカさんを追っている組織の一員だった事があるんです」
その第一声に、三人は揃って凍りついた。タカナオとヒナを見るが、二人は目を合わせようとしない。
それからリョウスケは、言葉を選びながら、組織がNWGであること。両親が捕まったこと。シャイルやマルナという同じ組織の裏切り者もいたこと。その二人が、サトシやシゲルが追っている人物だということ。とにかく、全てを話した。
「本当に、本当に……すみませんでした!」
リョウスケは席を立ち、深く頭を下げた。彼の声は震えている。
「り、リョウスケを怒らないで下さい!!」
「両親が捕まったなら、あたしもそうしてしまうと思います!」
タカナオもヒナも立ち上がり、深く頭を下げる。リョウスケは悪くない。悪いのはNWGの連中だと訴える。
「NWGが悪いのはわかったわ。まずは、三人とも落ち着きなさい」
カスミはそう言って三人を席に座らせた。
「でも、これからはこういう事はやめなさいよ」
カスミはキツく言った。それでも抑えているようだった。本当は思い切り怒りたかった。それでも出来なかったのは、リョウスケが相当な勇気を持って話してくれたのがわかったから。
リョウスケはカスミの気持ちを汲んだ。殴られても仕方ないと思っていた。堪えてくれているカスミに大きく頷いた。
「それでまだ話があるんです。これは、タカナオにも、ヒナにも話してない……」
リョウスケはポケットから『リョウスケ君へ』と書かれた封筒を出した。そして、その中身の手紙を取り出す。
「これ……、リョウスケを応援してる人からの手紙じゃなかったっけ?」
以前、リョウスケが両親に渡された手紙だった。
「これは、俺を応援してくれてる人からの手紙じゃねぇよ」
そう言われ、少し考えるとピンときた。リョウスケはあの時、両親が帰ってきていて驚いていた。そして、彼の両親は風変わりな旅人に助けられたと言っていたのだ。つまり、今までのリョウスケの話を繫げると、この手紙は、シャイルかマルナからの手紙となる。
「シャイルさんからの手紙だ」
リョウスケは、その手紙をタカナオに渡した。