誰も知らない物語2 完全版

□7章 シャイルとミズカ
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「さっきサトシさんとシゲルさんには話した。シャイルさんには、無理に二人に会ってもらうように言ったんだ。今頃、クチバシティのファミレスへ会いに行ってるさ」

その言葉に驚いた。彼は、サトシとシゲルにもう全てを話していたらしい。

「お前が読め」
「ぼ、僕が?」

タカナオは聞き返した。リョウスケは頷いている。手紙を渡された彼は、ゆっくり読み始め、やがて顔色が変わっていった。


「ここみたいだね」
「緊張するぜ……」

一方、リョウスケから連絡があり、全てを話してもらったサトシとシゲルはファミレスにいた。

「ファミレスって……。もっと良い所、なかったのかよ」

サトシがボソッと言った。せっかくの緊張感も台無しである。

「そんな文句を言ってる場合じゃない。行くぞ」

シゲルは呆れるとスタスタ中へ入って行った。肩に乗せたピカチュウと顔を見合わせると、サトシもそれに続く。

中に入ると、窓から一番離れた所の端の席に、シャイルとマルナはいた。そこだけ異様な空気を放っている。マルナは二人に気づくと立ち上がり、お辞儀をした。

「すまないね。時間をもらって」
「いえ……、あの、どうぞ」

マルナは、二人に席へ促す。すると、店員が来て、メニューを聞く。二人は適当に飲み物を頼んで店員を見送った。

「こんにちは。俺はシャイル。こっちがマルナだ」

黙っていたシャイルが口を開いた。室内にも関わらず、ハンチング帽にマフラーをして顔を隠している。リョウスケにはシャイルはもしかしたらずっと黙っているかもしれないと言われた。二人は喋ってくれてホッとする。

「俺、サトシ」
「僕は、シゲルだ。よろしく」

二人が自己紹介をすると、軽くシャイルは頷いた。

「どうやら、タカナオをこの世界に連れて来るのに、君達も関わっていたらしいね」
「はい。リョウスケとあらかじめ、打ち合わせしていました」

シゲルの言葉に、マルナは答えた。シャイルからは、ある程度のことは答えて良いと言われている。

「裏で協力してくれたのは、ありがたいけど、どうしてリョウスケに背負わすような事をしたんだ?」

サトシが聞く。電話でのリョウスケは切羽詰まった様子だった。後でいくらでも説教は聞くと。

「……背負ってるのはシャイル様のほうです」

ボソッとムッとした表情でマルナが言うが、シャイルが止めた。そして、サトシの質問に自分が答える。

「ああ。だから最初、俺はリョウスケに両親を連れて逃げろと言った。だが、あいつは手伝いたい、と自らが言ったのだ。別に強制はしてない。むしろ、手伝うという言葉に反対した」

その言葉にサトシは黙る。リョウスケならありえる行動だと思った。そして、シャイルの言葉に懐かしさを感じる。サトシは8年前の記憶を思い出していた。

「俺は、マルナとリョウスケに感謝しているんだ。こんな状況になって悪いと思ってる」

シャイルの隠れた横顔を見て、マルナは顔を歪めた。

「君達は、どうしてNWGに入ったんだい?」

シゲルに聞かれ、マルナはチラッとシャイルを見た。

「私は……」
「話す必要などない」

口を開いたマルナを遮り、シャイルはそう言った。「でも」とマルナが不満そうな表情をするが、シャイルは首を横に振る。
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