誰も知らない物語2 完全版
□8章 交差
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「なら、私も……」
「ダメ」
即答だった。マルナは顔を歪める。
「どうしてですか……」
「え?」
「どうしていつも、私を引き離そうとするのですか?」
その言葉に驚いた。まさかマルナがそんな風に思っているとは、考えていなかったのだ。
「組織を裏切ろうとした時も、北風使い様は私を置いて行こうとしました。今回もそうです……。そんなに……、そんなに私が嫌ですか?」
「マルナ……」
「もう北風使い様は気づいてるかもしれませんが、私は貴方が嫌いでした。でも今は違うんです……。貴方がいなくては……」
泣きそうなマルナの顔を見ていられず、思わず抱き寄せた。そんな抱え込んでいるなんて知らなかった。
さっきのことを思い出す。自分が孤独に思っていることを知っているなら、マルナだって同じはずだ。自分のことばかり考えていて、ミズカは自分のことが情けなくなった。
「バカ……」
マルナが自分を嫌いだったことは知っていた。それでも間違いは正さなくてはいけないという意志を持っていたマルナがミズカは好きだ。
「マルナが……大切だから。だから、危ない目に遭わせたくないの。……嫌いじゃない。……その逆」
マルナを解放さする。
「ミズカ……さん」
マルナが顔を上げ、ミズカを呼んだ。ミズカは少し驚きながらも、嬉しくてニコッと笑う。
「やっと、名前で呼んでくれた」
ミズカの言葉に、マルナは「あっ」と声をもらした。彼女はミズカの名前をまともに呼んだことがなかった。シャイルか北風使いと呼び、様付けまでしていた。
これで、距離を置いていたのをミズカはよくわかっていた。だから、彼女には名前で呼んで欲しかったのだ。
「駄目って言ったのはあたしの感情。マルナ。……貴方にも、リョウスケという仲間がいる。……マルナはどうしたい?」
「行きます! そして、母に言うんです。これは間違いだって」
マルナの発言にミズカはいつかどこかで自分も言ったことがあるような気がした。しかし、今はそれについて深く考えている時間はない。
ミズカは、ニッと笑うと「決まり」と言って、サーナイトとチルタリスを連れて、外を飛び出して行った。
「行って来る」
サトシはノリタカに言うと、表情を引き締めて出ていった。シゲルとマルナは会釈をし、ミズカとサトシの後を追う。外に出ると、サーナイトによって眠らされた警察官があちこちで倒れていた。
「ありがとう。サーナイト」
ミズカは、サーナイトをモンスターボールへ戻す。
「さてと、行きますか」
そう言いながらチルタリスに乗り、「よろしく」と頼んだ。サトシはリザードンを出し、一緒にマルナも乗せる。シゲルはプテラを出した。
「凄い。プテラだ……」
「研究で調べていたんだ」
ミズカが自分に対してタメ口になった事に関してシゲルは何も言わなかった。大体の予想はついている。サトシが何か言ったのだろう。
彼らは、空へと飛び立った。