誰も知らない物語2 完全版

□8章 交差
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「……マルナもリョウスケも心配してたぜ? 自分じゃミズカを救えないって。だから、俺たちに助けてほしいって」
「……え?」
「あ、この件が解決できないって話じゃないからな。お前の心の話」
「あたしの心……?」
「孤独に思っていることに二人とも気づいてる。それでも、そばにいたり、タカナオを守るのを手伝ったりしてくれてる。これって、本当にミズカが北風使いだからってだけなのか?」

ミズカは目を見開く。少し自分の塞ぎ込んでいた気持ちが前に向いていく。

「俺は違うと思うぜ。サーナイトだって、ミズカのことが大好きなんだよ。ちなみに昔はめちゃくちゃ泣き虫のキルリアだったからな」
「……サーナイトが?」
「あぁ。ミズカには他にも沢山のポケモンがいた。ピカチュウとも仲良かったしな」
「ピカピカ!」

ピカピカがサトシの肩に乗って、大きく頷く。

「あたしのこと嫌じゃないんですか……?」

ミズカはサトシに疑問をぶつける。なぜ、こんなに優しいのかと。父の話を聞く限り、自分はサトシに恨まれていても仕方ないと思っていた。

「え、俺?」
「いや、だって異母兄妹じゃないですか。なのに、なんでそんな自信満々に北風使いは関係ないって言えるんですか……」

サトシは目をパチクリさせる。そして、やっと気づいた。記憶のないミズカは、異母兄妹について気にしていてもおかしくないと。

「俺、それについては全然気にしてないぜ? ミズカがショックなところ言いづらいけど、俺はまた会えて嬉しいし、早く仲間たちに会わせたくて仕方ない。一番会って欲しいのはエーフィとカスミだな。カスミはうるさそうだけど」
「……」
「今、仲間たちが動いていることに北風使いなんて関係ない。ミズカだから探してたし、ミズカだから一緒に解決したいって思ってる。俺、こう見えてチャンピオンなんだぜ?」

ニヤッとするサトシに、ミズカは少し泣きそうになった。それを隠すように2枚目のホットケーキを焼き始める。

「心配するなって、もとの世界へ帰れなくても、ミズカの居場所はここにもあるんだ。絶対に独りにさせない」
「ここにも……」

会うのが怖かった。巻き込みたくない理由は、いくら仲が良かったと言っても、この立場になって、本当に受け入れてくれるかわからなかったというのが本心だった。

だが、サトシの言葉に嘘はない。自分が知っているアニメのヒーローは、18歳でもヒーローのままだ。
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