誰も知らない物語2 完全版

□9章 悲しき現実と蘇る記憶
2ページ/15ページ

「そのままゴッドバード!」
「チルチル!」

破壊光線が放たれるのと同時だった。青白い光とオレンジの光がぶつかり、爆発音を立てた。煙が凄くて前が見えない。目を凝らしてよく見ようとするタカナオの前を誰かが通った。

まさかと思ったが、昼食の前のヒカリの言葉を思い出す。

『昔ね。チルタリスに、二、三日でゴッドバードを覚えさせたのよ』

まさか。再度、そう思った。煙が引いて視界がよくなる。横切った人の正体に思わず目を擦らずにはいられなかった。カスミは、せっかく立ったのにも関わらず、力が抜けてしまい。地べたに座り込む。

「なんとか間に合ったみたいだな」
「みたいだね」

後ろから、サトシとシゲルの声もした。振り向くとポケモン世界に行く前に出会った金髪の少女……マルナもいた。

「さ、さすがかも」

ハルカが力なく笑う。今の状況が信じられないのだ。ずっと会いたかった仲間が、まさか助けに現れるなど誰が考えただろう。

「さぁ、リョウスケを離してもらおうか」

そこには、紛れもない北風使いの姿があった。たとえ、服装や身長、髪の長さが変わろうとも一発でわかる。彼女だ。ミズカだ。

「あの条件は考えたか」
「考えなくても答えは出てる」

カルナの言葉に、ミズカはムッとした表情でそう言った。

「逆らうのか。ならばリョウスケがどう……。何!?」

隣を見るが、リョウスケはいなかった。いつの間にか、タカナオが彼に肩を貸している。サーナイトがテレポートでリョウスケを此方に連れてきたのだ。

「ミズカさん……。すみません」
「謝らないの。あたしが悪いんだから」

リョウスケを助けられたものの不利には変わりなかった。キッとカルナを睨み付ける。 

「今の状況を考えても、我々に逆らう気みたいだな。……マルナ、お前は私の子ではなかったか?」
「世界の破滅なんて間違っています!」

マルナが前に出てきた。

「世界の破滅は殺人です」

言うのが苦しい。何故、親を前にして、言わなければならないのだろう。

「……人を殺そうとするのは間違ってます」

マルナの悲しみに満ちた表情に、サトシ達は8年前のミズカと重なり合わせてしまった。ミズカは、またデジャヴを感じる。

「私は、人を殺す自分の親を見たくないんです。何故、そんなにも酷いことをするのですか? 何故、私だけ組織に残したのですか?」

マルナの、残したという言葉に、タカナオ達は首を傾げる。

「知っていたのか」
「はい。姉妹で、知っていました」

ヒナがマルナの隣に来た。
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ