DANGEROUS TRIP

□一章 疫病神の任務
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「お父様、旅に出させて下さい」

これが、私の願いでした。一刻も早くここから出たい。毎日、毎日、そう思って止まなかったのです。
何故なら、ここは、ロケット団のアジト、そして私のお父様はその幹部なのですから。

「駄目だ。お前には、まだ早い」

お父様の返す言葉はいつも同じです。私はもう、ポケモントレーナーになれる歳だと言うのに、産まれてから今まで、外に出させてもらえても、他の子とは全くの別扱いでした。ボールを蹴ることも、走る事だって許してはもらえませんでした。

そんなある日です。彼の存在を知ったのは……。

「また、奴がやらかしたか……」
「はい、ケンタロスを間違えて蹴ってしまったそうで……、群れは何処かへ行ってしまったそうです」

お父様とその部下の話を偶々聞いてしまいました。

「疫病神がな……頭が良い、身体能力も良い。それなのに何故、ヘマをするんだ」
「彼には私から、叱っておきます。それでは」

そう言って、お父様の部下は部屋を後にしました。

「……お父様。疫病神とは……誰ですか?」

旅の話以外だと、お父様は快く何でも話して下さいます。
疫病神とは、ロケット団員の中で成功した事がないという人らしいです。歳は私と同じ、頭が良いので、将来は有望と言われてるそうで……。
私はそれを聞いた後、その少年を見に行きました。ロケット団のアジト内なら私は自由に動くことが出来ます。

「おばさん、カレーライス二つな!」

食堂で彼を見つけました。とても子供らしく、でも、他の子達とは何処か違う……。そう、私みたいな……。私と同じ匂いがしました。

その時に、思ったのです。一瞬しか見る事は出来ませんでしたが、彼なら、私の心の内をわかってくれるのではないか。彼なら、友達になれるのではないかと。
私には友達がいません。お父様から友達は作るなと言われておりました。しかし、ロケット団員の彼ならきっと……大丈夫。そう思ったのです。

「お父様、私、ある人と旅をします。他に人がいるなら問題はないでしょう?」

勿論、お父様にはかなり反対されました。疫病神を連れて行くなと……。
それでも、私は退きませんでした。日に日に、ここを出たいという思いが強くなっている今、もう我慢する事など、私には出来ませんでした。

「わかった」

仕方なしに、お父様は許して下さいました。こうして、彼と私の旅は始まったのです。 危険な旅が……。
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