DANGEROUS TRIP

□三章 駆け引き
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「これからどこへ行くかだよな……。あ、でも、ニビシティしかねぇか……」

空を見上げながら、ブツブツ独り言を言うタクトに、サラは不思議な表情で見ていた。

「となると、裏から行って……タケシのジムに行くしかねぇな……。アイツなら一日ぐらい、泊めてくれるはずだ……」
「あの……」

サラは恐る恐る、タクトに話かけた。

「あ? なんだ?」
「……これからどこへ?」
「あぁ、ニビシティに行くんだ。トキワシティに出ると厄介だかんな」
「サカキ様?」

サラが聞く。サカキとは、ロケット団のボスである。彼らがいたアジトは、ボスのいる本部で、トキワシティの近くにあるのだ。だ

「お、よくわかってんな」

タクトは関心した表情でサラを見た。

「つーことは、ここがトキワの森っつう事も知ってんだな」
「いいえ。トキワの森って何?」

そう聞かれ、タクトはコケた。

「知らねぇのかよ!? トキワシティを知ってんなら、ニビシティはともかく、トキワの森ぐれぇ知ってんだろ!」
「そんな事を言われても……」

知らないのだ。仕方がない。

「トキワシティは、サカキ様がジムリーダーをしていらっしゃると聞いて……」
「なるほど、それで知ってんのか」

タクトは大きくため息をついた。たしかに、トキワシティには、ロケット団のボス、サカキがジムリーダーをやっている。
それはまだ、ロケット団員しか知らない事だ。サラも団員に近い存在だ。マキハラ幹部に教えられていれば、知っていてもおかしくはない。
しかし、それを簡単に話すマキハラ幹部もどうかと彼は思った。

「トキワの森は、そのトキワシティと俺らが行くニビシティの間にあんだ。それが、ここっつーわけ」

そう言いながら、道から外れ、木々の間を通って行く。サラは、とくにその事に関しては何も言わなかった。

「へぇ。タクトは物知りなのね」
「こんくらい知らねぇと、ロケット団員なんか務まらねぇよ」
「いつも失敗しているのに?」
「てめぇ……、喧嘩売ってんのか……」

タクトは、ムッとした表情でサラを見る。サラは、面白いのかクスクス笑った。

「冗談よ」
「わぁってるよ。そんくらい。ほら行くぞ」

もうこの話はしたくないのか、タクトはそう言ってスタスタ歩いて行った。サラは、笑いを堪えながら後に続く。
しばらく歩いていると、町に出た。タクトが来たかったニビシティである。

「……着いたな」

そう呟きながら、辺りをキョロキョロ見回す。

「おかしい……」
「え?」
「町が静か過ぎんだよ。それに、俺らを連れ戻すんなら、とっくにロケット団員はこの町にいるはずだ」

先を読んでいたのだが、意表をついた。町には人っ子一人いない。静かで、逆に気味が悪かった。

「……これじゃ、やべぇな」
「何故? 逆に嬉しいのではないの?」
「静か過ぎるっつう事は、なんかあったはずだ。これがロケット団の仕業なら、多分、俺達を連れ戻すためだろうよ。このまま、町に突っ込めば捕まるし、かと言って動かずにいれば自ずと見つかる」
「それって、裏をかかれたの?」
「だな。どちらにしろ、捕まんぞ」

サラの驚いた表情に、冷静にタクトは言う。

「どうするの?」
「とりあえず、突っ込む」

そう言ってタクトは、一つの建物を指差した。目を凝らすと、『ニビジム』と書いてあった。

「ジム……?」
「そ。あそこのジムリーダーなら、俺がロケット団だっつう事は知ってるから、なんとかなる」
「……あそこまで走るのに捕まらないの?」
「捕まる可能性はなくもねぇな。……でも」

そう言いながら、サラの腕を引っ張り誰もいない町を走り始めた。案の定、ロケット団がいて二人を追いかける。

「ザッと十人か。俺はロケット団のしたっぱに追いつかれるような足じゃねぇんだ。スピード上げんぞ」

そう言うと、タクトは走るスピードを上げた。手を引っ張られ走っているサラは少しバランスを崩しながらも、スピードを合わせた。
団員達との距離はあいてきた。そして、ジムの前に着くと、そこに入って行った。

「勝手に入っていいの?」
「平気だよ。家じゃねぇし。ここに挑戦するトレーナーは皆そうする。……追いつかれたみてぇだな」

そう言って後ろを向くと、したっぱが入って来た。
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