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□君と過ごすクリスマス
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・様々なCPが出てきます!
・だいたい四つくらい…かな





ジングルベルジングルベル
鈴がなる。
今日は楽しいクリスマス……ではなく、その前日のクリスマス・イブ。池袋の街には若者のグループやカップル、サンタの扮装をして店先に立つものなど様々な人で溢れていた。

どこか浮き足立った街。非日常はすっかり身を潜めて……は、おらず。

ガッシャァァンッ!

いつもの非日常―表現が少しばかり可笑しいが、他に表現できないのでご勘弁願いたい―がやはり存在していた。


「シズちゃん!落ち着いてよ!!」
「俺はいたって冷静だ」

池袋のいつもの非日常ベスト5に入るであろうとある戦争。二十四時間戦争コンビの通り名は伊達じゃない。寧ろコンビ名と化している。
そんな二十四時間戦争コンビの片割れ、素敵で無敵な新宿の情報屋折原臨也は焦っていた。とてつもなく。それは何故か?


「シズちゃん、俺謝るから!ゴメン、本当にゴメン!」
「謝罪はもう聞き飽きた」
「本当にゴメンって!決してわざとじゃないんだよ?だからね、真顔で自販機持ち上げないで怖いから!」
「言い訳乙。死ね」
「いやぁぁああぁぁっ」


普段の喧嘩と言うか戦争ではもう片方の人物、平和島静雄が我を忘れるほど激昂し喧嘩というか戦争に縺れ込み、静雄の様子を臨也が相変わらずだと嘲笑するのが常である。
しかし今はどうだろう。
静雄は激昂ではなく実に冷静だ。だが殺気はいつも以上に鋭く痛い。そして冷たい。まさに絶対零度。
対して臨也だが、嘲笑する余裕はなくひたすら静雄からの攻撃を避け続けている。なんだかとってもかなり焦りながら避けている。

うわ、やっぱシズちゃん怒ってるよ!今までの怒り方が可愛く見えるくらい本気で怒ってるよ!どうしようどうしようどうしようあわわわわ。

が、今の臨也の心境である。
何故こんなにも焦っているのか?
理由は二人の会話を聞いていればわかる。

「シズちゃんってばぁっ」
「うるせぇ。だいたいテメェが悪ぃんだ」
「俺が悪いのは認める!認めるから話聞いてよ!!」
「…………約束の時間に二時間も遅れた奴の話なんざ聞く価値もねぇぇぇええぇぇッッ!!」

ドンガッシャーンッッ!



………おわかり戴けただろうか?え、分からない?説明しなくちゃダメですか?……はい、わかりました。めんど……げふん。時間がないのでチャキチャキ説明します。箇条書きで。

・臨也と静雄は付き合っている(重要)
・クリスマスとクリスマス・イブは恋人たちの聖夜である
・静雄は案外イベントに目がない
・そして臨也はそんな静雄がラブ!なのである
・ならクリスマス・イブは二人で過ごそう!
・しかし臨也、仕事が大量に溜まっている(サボっていたため)
・イブまでに終わらせようと連日徹夜
・昨日ついに終え、今日に備えて仮眠
・結果、寝過ごした


と、いう次第である。

「……楽しみにしてたのに」

ポツリと呟いた静雄は最早涙目である。

「……………」

あまり、否、殆ど罪悪感を感じた事がない臨也だが、流石に居たたまれなくなったらしく黙りこくった。

「……………」
「……………」
「…………今日を血のクリスマス・イブにしてやる。臨也、テメェの命日はクリスマス・イブだ」
「それだけはやめてっ!」


べきりと静雄が標識を捻り切ったのを合図に再び始まるはた迷惑な恋人二人の喧嘩。人はこれを痴話喧嘩という。



「シズシズたちも相変わらずねー。てかシズシズの涙目萌え!」
「……お前の頭も相変わらずだな、狩沢」

そんなはた迷惑な痴話喧嘩がばっちり見える所に止めてある一台のバン。
一つだけ開けられている窓から一人の女性が身を乗り出して痴話喧嘩を眺めていた。そして、女性を宥める男が一人。

「はっ!年明けのイベントはイザシズにしようかな」
「お前の趣味に知り合いを使うな」

女性の方を狩沢絵理華、男の方を門田京平という。
二人とも池袋では有名で、門田はダラーズの顔役として、狩沢はゴッド狩さ……とある業界のトップとしてだ。

「えー……ならドタチンで…」
「止めろ」
「ドタチンに拒否権はないわよ?だって契約したじゃない!」
「うっ………」

狩沢の言葉に反論が出来ない門田。
それもそのはず。門田は確かに狩沢と契約をしていたからだ。

「あ、そろそろ約束の時間なんじゃないの?」
「え、あ、あぁ」

門田がケータイを取り出し時間を確認したその時、どこからか彼を呼ぶ声。

「かどたーーっ!」

ダダダッと走ってくるのはストローハットを被った青年。青年は門田のもとへとやってくると甘えるように抱きついた。

「久しぶりだな、門田!」
「二日前も会ったろ」
「俺は毎日会いたいんだよ!」

うりうりと門田の胸板に額を押し付ける青年―六条千景の頭からハットをとり撫でる門田。
そして、その様子を眺める狩沢。

「男前な兄貴分×女たらしな弟分……これだわ!」
「狩沢……」
「分かってるって!じゃ、私はアニメイトに行ってくるから!じゃあねドタチン、ろっちー!」
「また会いましょう麗しのレディ!」


門田に一睨みされた狩沢は肩を竦めて退散しようとした。が、門田の耳元で言った。

「契約、忘れないでねドタチン!」
「………分かってる」
「じゃ、楽しんできてね」

ルンルンと気分上々な様子で去っていく狩沢に門田ははぁ、っとため息をついた。


俺、なんでアイツに相談したんだ。もっと他にいただろ。狩沢にデートプランなんて相談しなきゃ良かった……。

つまり門田は狩沢に千景とのデートプランを考えて貰う代わりに、デートの様子を包み隠さず報告しなければならないのだ。ご愁傷様である。
しかし後悔は先に立たない。後に悔いるから後悔と言うのである。


再びはぁ、と深いため息をつく。

「門田?」

しかしそんな重い悩みも千景からの「首を傾げながら上目遣い」によって霧散してしまった。


…ひとまず今を楽しもう。過去なんて気にしててもしょうがない。俺は今を生きる。

ってな具合で門田は千景と共に池袋の街へと繰り出した。

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