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□その恋のお相手は
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・捏造注意
・主に静雄さんの過去を捏造









先生が去ると、途端にガタガタと騒がしくなる教室。数人ずつグループになって放課後という「自由」を楽しむのだ。

「帝人、杏里!帰ろうぜ!」
「うん。今いく」

僕の放課後と言えば同じクラスの園原さんと幼なじみの正臣と一緒に下校すること。真っ直ぐ帰ることもあれば、三人で寄り道したりもする。もっとも、最近は一緒に帰る回数も減ったのだけれど。

「ねぇ、今日はどうする?どっか寄る?」
「そうですね……」
「よっし!なら今から西口公園に行って女の子たちをナン」
「園原さん、行こう」



正臣のおかげで格段に上がったスルースキルを使って当人をからかいながら昇降口へと降りる。


「あっれ……」


突然、ぺちゃくちゃと小気味良いテンポで喋っていた正臣が口を閉じた。
と、思ったら突然にやりと笑って僕を見た。


「みっかど〜。お前愛されてるな〜!羨ましいぜっ」


ニヤニヤニヨニヨと笑いながら僕を見る正臣。
園原さんを見ると、なんか温かい目で見られた。

正臣の視線のほうを見れば、あの人がいた。


「竜ヶ峰くんは幸せ者ですね」
「確かになぁ。アイツは強いし優しいからな!」

そう言われるとだいぶ照れる。褒められているのはその、こ、恋人なのだが。


「ほら帝人!早く行ってこいよ!待たせちゃ悪いだろ?」
「うん、ありがとう二人とも。また明日ね」


バイバイ。と二人と別れ、恋人の元へとかける。



恋人は、校門によりかかりぼーっと空を眺めていた。


「し、静雄さん!」


息を上がらせながら駆け寄れば、彼は視線を空から僕に移した。


「帝人か」


池袋最強と謳われている恋人―平和島静雄は僕を視界に捉えるとわしゃわしゃと僕の頭を撫でた。


最近静雄さんはよく学校へと迎えに来る。正臣と園原さんと帰る回数が減ったのはこのためだ。
仕事も有るはずなのに、わざわざ僕なんかの為に。
とても嬉しくて、気分は上々だ。


「その、まっ待ちました、か?」「いや、そんなに待ってねぇよ。だから気にすんな」

ポンポンと頭を撫でられる。何故かは知らないが、静雄さんはよく僕の頭を撫でる。前に聞いてみたら「なんとなく」と返された。

「じゃ、帰るか」
「はい!」

世間話をしながら向かうは僕の家。話の内容は様々で、仕事の愚痴だったり臨也さんの話だったりだ。
僕は基本的に聞き手で、静雄さんの愚痴を聞く。何か聞かれる事もないので、本当に聞くだけだ。
しかし今日は珍しく静雄さんから質問された。

「なぁ、帝人」
「はい?どうかしましたか?」
「お前……あの二人とどういう関係だ?」


ふと名前を呼ばれて返事をすれば聞かれたのはあの二人のこと。
静雄さんの顔を見れば、どこか不機嫌そうだった。これってもしかして、

「ヤキモチ、ですか?」
「っ!」
「そうなんですか?ねぇ、静雄さん」
「悪ぃかよ……」

プイッと反らされたため表情は分からない。
しかし、染め上げられた髪から覗く耳は赤かった。
そう言えば……静雄さんの初恋はいつなんだろうか。聞いてもいいかな?いいよね!


「じゃあ、静雄さんの初恋はいつですか?」
「は?」


頭にハテナマークを浮かべ小首を傾げる静雄さんは可愛かった。うん。
可愛かったり格好良かったり…何なんですかこの人。


「だから、静雄さんの初恋はいつですか?」
「ハツコイ?」
「そうです。初めての恋と書いて初恋」
「いきなりだな…つーか、お前はどうなんだ?」


あくまで自分は話したくないのか、こちらに話を振ってきた。
別にやましい事は何もないので素直に答える。


「園原さん、です」
「……そうか」
「でも愛するのは静雄さんが初めてです!」
「っ……そうか」

あ、また赤くなった。いつもは僕がドキドキさせられてるから偶にはいいよね。


「に、しても……お前と園原が会ったのは高校だろ」
「ええ。だから僕の初恋は高校です」
「高校で初恋とか遅くねぇ?」
「そうですか?でも人がいつ恋するかなんて分かりませんよ!いろんな人がいますからね!」
「……あいつに似てるからヤメロ」


あいつって…あぁ、臨也さんのことか。
あの人、人ラブ!だからなぁ。


「でも今は静雄さんが恋人で良かったです。優しいし強いし格好いいし可愛いですし!」
「か、可愛いってなんだよ…」


カァァっと顔を赤くしていく静雄。うん、やっぱり可愛いです。


「僕は話しましたよ?次は静雄さんの番です!」
「……はぁ。分かった。っと…あれは確か――」


〜静雄の初恋回想〜


ザク、ザクと砂をシャベルで掬っては、目の前の砂のお城に足していく。
周りには同じくらいの年の奴らが遊んでいた。


「あっれ〜?お前、なんで独りで遊んでんの?」
「んなこと言ったら可哀想だろ!友達がいないんだからよ!」
「なら俺たちが遊んでやろうか?」


突然近づいてきた三人は卑下た笑い声をあげた。


「黙れ」


キッ、と睨みつけても目の前の三人はたじろぎもしなかった。


「あぁ?何睨んでんだよ。お前……生意気っ!」


グシャリと作った砂のお城が潰された。
同時にプツンと何かが切れた音。
――あぁ、ダメだ。また、また…止まれよっ――!

理性を失い、ただひたすらに破壊した。
我に返ったときには、足元に三人が転がってる以外、誰もいなかった。


「っ―――」


ぐっと歯を食いしばり、流れそうになる涙をせき止めた。


「凄いね、君」


背後からかけられて、ビクリと跳ねた体。
後ろを向けば、風にショートカットの黒髪を靡かせた一人の子供がたっていた。


「今の見てたんだけど…すごい力を持ってるね」
「…こんな力、いらない…。周りに誰も寄ってきてくれないから……。どうせお前も怖いんだろ。他の奴らみたいに俺のこと…『化け物』って――」


ふわりと香る、シャンプーの香り。
首に柔らかな髪があたってくすぐったい。
背に回された腕にぎゅっと抱き締められていた。


「っ!?」
「そんなに自分を責めちゃダメだよ。ボロボロになっちゃう」


更にぎゅううっと抱き締められた。
トクン、トクンと聞こえるのはどちらの心音か。
物心ついたときからひとりだった。
家族以外とこんなに触れ合ったことなどなかった。
人ってこんなに暖かいものだったけ?


「お、まえ……俺が、怖くない…の、か?」


恐る恐る尋ねれば、そいつはキョトンとして言った。


「なんで?」
「なんで、って……」
「カッコイイよ。いいなぁって思う」


ふわり。
自分に向けられた笑顔に体が熱くなる。


「みんながみんな、君が怖いと思ってる訳じゃないんだ。味方だっているんだよ」


だから、泣くの我慢しないで。
優しく告げられた言葉。
頬に、涙が伝った。





「落ち着いた?」
「うん」


そっか、と笑うこいつは、今までの奴らとは違うように見えた。


「ホントはもっと君とお話ししたいんだけど…もう行かなきゃ」
「そっか」
「ごめんね?またねっ」


そういって、そいつは去っていった。


〜end〜


「――みたいな」
「わぁ……可愛い初恋ですね!!」
「うっせ。ニヤニヤすんな」
「拗ねないでくださいよ」
「拗ねてない」


ちょっとからかうと、静雄さんはムスッと拗ねた。


「それで、その子とはその後どうなったんですか?」
「一回も会ってねぇ」
「…随分と儚い恋ですね」
「みんなには『いーちゃん』って呼ばれてたっけか」
「へぇ、いーちゃん……あれ??」
「どうした?」
「いや、何でもないです!」
「そうか?……っと、もう家の前じゃねぇか」
「あ、ホントだ。ありがとうございました」
「おう。また明日な」


片手を上げて去る静雄さんに手を振る。去り姿もカッコイイってどんだけですか……

でもね、静雄さん。
僕、アナタの初恋の相手、知ってるかもしれないです。

+--+--+--+--+--+--+--+

「帝人くん、いる?」
「……家に入った後に聞いても意味ないです」


夜。
ひとりでテレビを見ながらオムライスを食べていた。
するとガチャリと言う音とともに入ってきた黒ずくめ。


「鍵は閉めておいたんですが」
「俺の前では無意味だよ」


あんな鍵おもちゃだよおもちゃ、と言いながらガサゴソと人の冷蔵庫漁る人物。


「最近シズちゃんと帰ってるらしいね」
「流石素敵で無敵な新宿の情報屋さん(笑)ですね」
「バカにしてる?」
「ええ、かなり」
「………………」
「…静雄さんが取られたのがそんなに悔しいんですか、臨也さん?」


臨也さんこと折原臨也は赤い目を細めた。


「何のことかな?」
「隠しても無駄ですよ。仮にもダラーズですから」

少し口角を上げて笑ってみせる。そう、僕だって伊達にダラーズを管理しているわけじゃないんだ。

「ああ、そう言えば面白い話を聞きました」
「面白い話?」

かくかくしかじかと静雄さんの初恋話を話す。
聞き終わった後の臨也さんは、最初ポカンとしていたけど
次第に肩が震えて、笑い出した。


「あははは!それは確かに紛れもない俺だよ!」
「ちょ、近所迷惑ですよ臨也さん!追い出されたらどうするんですかっ!」
「まさか女の子と間違えるなんてねぇ…ホント、シズちゃんは俺の予想斜め上をいくね。帝人くんもそう思わない?」
「スルーしやがって。知りませんよそんなこと」


あはははと大声で笑い続ける臨也さん。
だけどどこか嬉しそうなのは気のせいだろうか。


静雄さん……アナタの初恋は腐れ外道の折原臨也でした。

ご愁傷様です。



アナタのタイプは黒髪?
(あ、追い出されたら俺の家来る?)
(聞いてたならその時に返事してください)
(で、どうするの?)
(静雄さんの家に行くので結構です)




――――――――

前サイトの夢小説をリサイクル
むっちゃ長くなっちゃいました。ちょっとだけ静→←臨(笑)





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