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□たった一つの真実に、すべてが狂い出す
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※パロディ


昔々、ある国の王様に子供ができました。王様はその子を臨也と名付け跡継ぎにしようと考えました。

臨也を溺愛していた王様は、臨也が俗世間の汚れに染まらぬよう王位継承の日まで一歩も外に出さず、城の奥にある秘密の部屋で過ごさせました。

秘密の部屋には高名な絵師が描いた絵が飾られており、臨也はそれを見て楽しみにしていました。
絵の中にあるように、いつか天女のような美しい女性や景色に出会えることを。




♂♀







時は流れ、臨也は眉目秀麗で立派な青年になった。年老いた王様は臨也に王位継承することを決意した。

そして、ついにその日はやってきた。臨也は王位継承と共に外出することを許された。
臨也はさっそく高殿にのぼって初めて外の世界を目の当たりにした。


しかし、それは臨也を狂わせる始まりにすぎなかったのかもしれない。



彼が目の当たりにした空の雲は、部屋に飾られていた絵の中の雲ほど美しくはない。
ならば街はどうだろうとお忍びで歩いてみた。


しかし、やはりと言うべきだろうか。街も女たちも絵の中とは比べものにならなかった。
臨也は絶望した。己が夢見ていた外の世界はこんなにも醜悪なのかと。

「おい、大丈夫か?」



城に戻る気にもなれず、臨也は裏路地で膝を抱えながら座っていた。ふと、かけられた声。
顔を上げると金色の髪をした青年が心配そうに自分の顔をのぞき込んでいた。

「立てるか?」

手を強く引かれ立ち上がらせられる。青年は臨也よりも背が高かった。

「お前、こんなとこで何やってたんだ?」

首を傾げながら問うてくる精悍な顔つきをした青年を見て、臨也はあることに気づいた。
臨也はその青年だけは醜いと感じなかったのだ。
どこを見渡しても絵とは比べものにならないくらい醜い世界。その醜い世界に臨也は光を見つけた気がした。




「おい」
「え、あ、……ご、ゴメン」
「大丈夫かよ」

苦笑する青年。臨也も釣られて苦笑した。

「大丈夫だよ。ただ、外の世界になれてなくて……」
「?」
「だ、だから!俺は体が弱いから、今まで家の外に出たことなかったんだ」
「そういうことか」

お忍びで来ているため、自分が王だとばれる訳にはいかない。
臨也が嘘をついたのはそのためだ。

「体が弱いなら気をつけろよ?ここらへんは物騒だからな」


じゃ、っと背を向けて去ろうとする青年。臨也は慌てて名前を聞いた。

青年は「静雄だ」と名乗ると去っていった。

静雄、しずお、しずお、しずお。
醜い世界で唯一光り輝いていた美しい存在。



絶望し、絵を描いたあの絵師を処刑しようとまで考えていた王、臨也はいつまでも静雄を見つめていた。彼が見えなくなるまで。





触れ合ったのは、たった一瞬
(君のことが忘れられない)


――――――――
何を書きたかったんだ私は……っ!
パロディにもなってない気がする。

「空を飛ぶ5つの方法」様よりお題をお借りしました!





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