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□喧嘩人形、ある日曜日
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朝。
寒さに身を震わせながらベッドから起き上がり窓を覗くと、外は白色でデコレーションされていた。
空からは今だ原因である雪が降り続けている。


「雪………」


折角の休日だ。
俺はいつものバーテンではなく、だいぶラフな格好で雪化粧をした池袋の街に繰り出した。





近くの、人気のない公園に行くと、そこにはまだ誰も踏み入れていないだろう雪があった。
俺は差してきた傘を畳み、公園に足を踏み入れた。
真新しい雪はサクリと音を立てる。東京では珍しい、少しふわふわした雪。
しゃがみこんで足元の雪を素手で掬う。それはとても冷たくて、己の姿と引き換えに俺の指先から熱を奪った。
今度は掬うのではなく少しかき集め、おにぎりを作る要領で握る。自分が出せるすべての力で作り出した雪玉は石のように硬い。
俺はその雪玉を手で弄び―――







後ろにいる、臨也に投げつけた。
「いだぁぁぁッッ!?」
「……臨也、テメェ何やってんだ」
「何って、日課であるシズちゃんの観察をするために後をつけ」
「死ね」
「ちょ、あぶなっ!?シズちゃんその雪玉だけはダメ!本当に痛いから!俺死ぬから!頭に当たったらパーンだから!」
「だから死ねよ」
「謝るんで許して下さい」

顔を雪の中に埋める勢いで土下座する臨也に、俺は新しく作った雪玉を軽く投げつけるだけで許すことにした。ストーカー許すとか心広すぎるだろ、俺。
もっとも、臨也の奴は雪の上を転げ回っていたが。

「あれ、静雄と臨也じゃねーか。何してんだ」

無様に転げ回っている臨也に内心ざまぁと笑っていると背後から声。振り返るといつものニット帽を被った男ま…ゲフン、門田がいた。

「あー、まぁ、雪合戦?」
「……何で疑問系なんだよ」
「一方的に雪玉を投げ付けられる雪合戦なんて聞いたことないよ!」

ようやく起き上がった臨也のファーは雪まみれになっていた。その様子を見た門田ははぁ、とため息をついた。

「結局はいつも通りな訳か」
「使ってるものが違うだろ」
「いや、変わんねーよ」
「そーか?」

どうやら雪を使っただけじゃ雪合戦にはならないらしい。日本語って難しい。
うんうんと一人で頷いていると、頬にトサッと冷たい何かが当たった。

「雪合戦っつーのはこうやるんだよ」

ニヤリと不適な笑みをこぼしながら、いつの間に作ったのか雪玉を手で弄ぶ門田に、俺もつられて笑みをこぼした。

「死ぬ覚悟はできてんだな、門田」
「俺が死んでもいいのか?」
「………よく、ないかもしれない」
「俺は?シズちゃん俺は!?」
「死ね」
「酷いよシズちゃん!」


不意打ちでヒュッと臨也に投げると、奴はいとも簡単に避けやがった。当たればよかったのに。
舌打ちをしていると別の方向から雪玉が飛んできたので体を反らして避ける。
仕返しをするために今度は門田に向かって雪玉―臨也に投げた物より柔らかめだ―を投げた。




いい年して何してんだろうと思う反面、偶にはこういうのも悪くないと思ったある日曜日。


喧嘩人形、
      ある日曜日
(あ、静雄たち、だ…ってぶふっ!?)
(あ、テメェ門田!避けんなよ!!)
(避けるだろ、普通)
(新羅、アウトー)




――――――
滑り込みセーーフッッ!!
期限ギリギリですみません!
素敵企画、「愛されたい君へ」様に提出させていただきました!リンクからどぞ!

新羅が最後にチョロッとだけ(泣)
臨也さんも空気……
すみません




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