□初めてのアイス
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ダブルラリアット




「…暑いでござる……」

川沿いの遊歩道の端で、温まったコンクリートをそろっと触ったがくぽが、げんなりと声を上げた。

「この島は亜熱帯だからね。僕達には迷惑な話だ」

シダの葉から刺す光を見上げてカイトが同意する。

「カイト殿は平気でござるか?」

「いや、やっぱり外は暑いよ?でもボディを持って長いから。」

「慣れたでござるか?」

「ん〜、理屈的には新型の君の方が暑さに強い筈だから…やっぱり慣れなのかな」

「…拙者も早く慣れたいでござる…」

機械の彼らは熱に弱い。オーバーヒート寸前、とばかりにがくぽがへたっとしゃがみ込んだ。

「きっと、まだ無駄な動きとか多いんだよ。動いてるうちに慣れるさ」

そう言いながら、カイトは通りに出て道を見渡し何かを探す。

「がくぽ、ちょっと待ってて」

がくぽが顔を上げると、カイトは走り去った。
小さくなる背中を見つめていると、停止しそうな回路の隅にぼんやりと何かが浮かんだ。

『この手の届く距離…今から、振り回しますので離れて、いてください…』

少し高い。4つ、キーを下げてみる。

『半径……………』

「がくぽ。何歌ってんの?」

「…あ。カイト殿。」

「大丈夫?」

見上げたがくぽの額に手を当てた、カイトの手はひんやりして心地よかった。

「…気持ち良いでござる…」

「だろー?はい、これ」

自慢気に笑ってがくぽの前にビニールを差し出した。

「これは?」

ビニールの中でふかふかと湯気を放つ物体を恐る恐る摘んだ。

「 ドライアイス。その辺けっこうアイスクリーム屋さんいるからさ。アンドロイドって判ると恵んでくれるんだよ」
ここはアンドロイド開発の為に造られた島なので、基本的に住民はアンドロイドに寛容なのだ。

「かたじけないでござる」

「まあ、オーバーヒートしない事が一番だけど」

大きめの欠片をとって、がくぽの首に当てる。

「回路が頭にあるから、首かおでこを冷やすといいよ」

じゅ、と音を立ててアイスが縮んだ。
あっという間に小さくなったその欠片を、カイトがぱくっと口に入れた。

「カイト殿は食べるのでござるか?」

「あ、ごめん無意識。何か好きなんだよね、アイスって」

「好きなのでござるか」

「これは別に好きじゃないけどね。『家』に戻ったら、もっと美味しいアイスがあるよ」

そう言いながら袋からもう一粒、ひょいっと口に放り込んだ。

「『家』で思い出したでござる!思い出せないのでござる!データベースに行きたい!」

「『本棚』に?何を調べるの」

突然立ち上がったがくぽを見上げてカイトが首を傾げた。

「両手を広げた半径でござる!」

癖なのか扇子を開いて、ばっと両手を広げ、強く言い放ったがくぽにカイトはアイスを落っことしそうになった。

「あ〜…、あれね。気分数値だしランダムで良いと思うけど…何故突然?」

カイトの回路が有名な一曲に行き着いた。苦笑いして応える。

「カイト殿の後ろ姿を見てたら歌いたくなったのでござる。」

がくぽは当然、とばかりに腕を組んだ。

「…意外と君って気分人間だよね…。いいよ、僕分かるから帰ったら一緒に歌おう」

「本当でござるか!」

「その前にアイス食べてからね。ドライアイスじゃ中途半端で飢えちゃった」

「む…。承知でござる」

早く歌いたいがくぽは、若干眉を寄せて頷いた。

「さ、帰ろう」

ひんやり冷えた手をとった



『半径…♪








end
 

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