imprisonment weather

□27*
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 カービィがいた。

 これはまたとないチャンスだ。なんで僕はこんなキチガイのフリをしないといけないんだろう。

 今まで箱の奥に隠してあったオモチャがこんな所にあったんだ。喜ばずにはいられない。
その喜びが過剰になりすぎてこんな風になっちゃったけどもう大丈夫。僕はおかしくなんかない。他の奴らとは違って僕はマトモだ。僕はマトモ。僕はマトモ。
 扉から少し離れて深呼吸をする。すゥーハァーす
ああああやっぱりダメぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ♡♡♡♡!!!!!!!!!!
 抑えきれない。熱い衝動が胸の中をブッちぎる。勢いよく扉にしがみついて舌を這いずる。ヨダレが体を伝う。熱い僕のヨダレ。ガァァァァンンと扉の重い鉄格子が鳴る。どうしよう。これじゃあもし扉が開いた瞬間カービィを【自主規制】してしまいそうだ!
 ああでも君の所に行きたい! 僕と君と二人だけの世界が欲しい! ああもぉぉぉ!
 ああ、落ち着けおちつけぇ
 これじゃあカービィが怯えちゃう…あのバカと同じになる…。

 アレ? なんか結構落ち着いて見え…る? そうか! 僕のことが怖くないんだ。何を勘違いしてたんだ僕はぁぁ! 僕は自分が思っているよりずっと正常で、僕がただ単に変な風になってるとばかりカン違いしてたんだねぇぇぇぇ?! ああ、よかったぁ。じゃあここを開けてもカービィに何もしないで済むんだ! そうだそうだ! はぅふぁはははは


「カービィ! 僕は正常だよ! ここを開けて! あへぁはははは八は」


 カービィってばさっきから恥ずかしがって剣で僕の目ん玉突き刺そうとしてるよ。別に恥ずかしがらなくてもいいのに。そうか! もしかして僕の目が欲しいのかな? でも、そうするとカービィの小さい丸っこい躰を見ている時間もなくなるんだよね? うぁあああああああそんなの嫌だぁアアアア!


「ねぇえ? 何であけてくれないの? 早く開けてくれないと、ぼ、僕。君を壊しちゃいたくなるよぉぉ? あ、それとも壊してもらいたいの? カービィってぇ、大胆なのサぁ♪」


 よくわかんないけど、何か頭の中がふわふわしててどうにかなっちゃいそうだ。しかしさ、カービィと僕の間を隔ててるこの壁本当に邪魔なのさ。どうしても撤去できないのかなぁ? 何でこんなものがあるんだろう? 


「ああああああああっっちっくしょおおおがぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!!!カービィを取るなぁぁぁぁぁッぁぁぁァァァァァ」


 突然イライラしてきたから壁を蹴っ飛ばしてやる。あ、そういえばこれって鉄格子みたいなので金属っぽいから壁じゃないのかも? そんなん知るか。あああああああっくそぉぉぉ


「ぼくのかーびぃいいいいいい!かえせえええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!うああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」


 めちゃくちゃに殴ったり蹴ったりをする。ああああああ爪にヒビが入る!いたいいいいたいたいたいけどカービィを僕の物にいいいいいい


 ガッギぃぃぃぃ


「?!」


 扉は壊れるんじゃなくて普通に開いた。随分とあっけない…。でもまぁいいや。

 ああ、ああああああああ。か、カービィだ。カービィが。居る。僕を見てる。


「………」

「カービィ。かーび・・・かーびぃ・・・・・・」


 不思議だった。さっきまでの高ぶった気持ちは波のように引いて行った。とても穏やかな気持ちが舞い降りた。

 僕は爪に目を下ろした。ヒビが入り、欠けた爪には変な糸のようなモノがドクドクと音をたて、紫色の血が流れてる。おかしいな。僕の血は確か赤だった気がする。
 でもいいや。
 カービィは灰の塊を近くでずっと大切そうに抱えていた。一体何をしてるんだろう。分からない。でもいいや。カービィを今一番抱っこしたい。おかしいものなのサ。さっきまで自分が恐ろしい事ばかりカービィにしてやろうとずっと言っていたはずなのに、その気持ちがどんどん静まっていく。なんだろう。泣けてきた。

 そうだ。こんな所にはいさせない。僕が大切にしてあげよう。何を今まで僕は焦っていたんだろう。たかが三流騎士にカービィが花を渡したからって。扉が一つ開かなかっただけで。何もこんなに気味の悪いことを言うんじゃない。

 償おう。何も悪くない。あの女には悪いことをしたことも。ここからカービィを連れ出して二人で幸せに暮らそう。拘束もない、制限もない。窓のある家で、二人で太陽の光を浴びる。おはようと声をかけて笑えるような。そんな日が。
 僕は考え方が子供だから。誰かに支えられないと嫌なんだ。誰かがいないと寂しいんだ。


「カービィ」


 僕はカービィに近づいて優しく抱きしめた。僕の禍々しい姿を見ても驚かないカービィは少し変わったようにも思えたけど。小さな温かい体は感じとれた。


「・・・まるく」

「かーびぃ、ここから一緒に逃げよう。こんなおっかない奴らがいない、どこか平和な村に・・・」


「・・・うん・・・」


 カービィはほのかに笑った。ピンク色の肌は少し赤らめていた。


































 せなかがとつぜんいたくなった。あつい。いたい。ああ、ああああああああ、ああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!


 ***


「汚い手でカービィに触るな。マルクソウル」

「あああ、あああああああああああ・・・!ギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアあああああああああああああああアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア??????!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」


 まるでゴキブリのようにじたばたと暴れる姿が実に滑稽だった。
 カービィは喜んでくれるだろうと思い、傍のカービィを見た。

 カービィは泣いていた。ふるふると弱弱しく震え、まるでこの恐ろしいものを悲しんでいるかのようだった。


「カービィ、ほら見ろ。悪い奴はもういなくなるから」

「ゲェッかっ・・・ふぁ…あ゛…か…ビ・・・ひッ・・・ぁ・・」

「まるく・・・、まるく・・・!」


 カービィが倒れたマルクに近寄ろうとしたから私はカービィの手を掴んだ。カービィは私の手を振り払おうとしていた。


「まるく・・・まる・・・」

「あはっ・・・は・・・カービィ…だいじょ…しあわせに・・・しあわ・・・やくそくしたも・・・ね・・・」


 やけに笑顔でマルクソウルはそのまま絶えた。それと同時にカービィはさらに暴れ出し、私の手をついにもの凄い力で振り払い、マルクソウルの傍へ駆けよった。


「やぁぁぁぁぁ・・・まるく・・・ぅあぁぁぁぁぁぁ・・・・・・・・・・・・」

「カービィ。やめなさい」

「うぇぇぇ・・・あぁああぁあぁ・・・」


 きっとこの子は優しい子だから死んだ者に対して泣いているのだろう。だが、それは汚いからあまり触らせたくなかった。


「カービィ、そろそろ泣くのは止すんだ。さぁ、行こう」

「わぁぁあぁぁぁぁぁっぁぁあああ」


 子供のようにマルクソウルに張り付くカービィを無理かりはがして私は部屋を後にすることにした。廊下には延々とカービィの泣き声が鳴り響いていた。






 続


 書いてる本人が言うのもなんですが、一瞬メタナイトを嫌いになりかけました。
 




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