imprisonment weather

□34*
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 庭へ出る。やはりここまでで…死体以外誰とも出くわしていない。

 城のものはみな殺されたというのだろうか…。


 そういえば、謎がいくつか残ったままだ。

・デデデはどこにいるのか。
・マルクがアドレーヌに出したナイフは結局偽物なのか(アドレーヌ)
・アドレーヌが連れ去られた後カービィが手に取ったものは(カービィ)
・最初の牢で降りてきたのは本当にメタナイトだったのか(カービィ)
・シャドーが見た白いなにか(シャドー)
・託していた絵具やパレットは(リボン)

 わからないことが山積みのままだ…。


「ねぇ、ギャラ…。あのあたりなんてどう?」


 庭の一角にある墓地。私はそこへ近づいた。

 
 ゾッとした。

 わたしは暫くの間…。その墓をただひたすらに見つめていた。


「…どういうこと…?」


 カービィは私が立ち尽くす姿を見て不審に思ったのだろう。墓に書かれた名前を呼んだ。


「…あ…あー…

 あど……、…?! …あ……『アドレーヌ』………?」


 待て、マテ…。アドレーヌは爆死したんだぞ?! なぜ…なぜ墓がある! いや、そもそも…これは誰が作ったというんだ? リボンか? ダークなのか?


 二人とも死んでしまった。真相は闇に消え、疑問だけがこの世界にとめどなくあふれていた。


「アドレーヌのお墓を建てたのって…誰なのかな…。
 とにかく、二人をこの近くに埋めてあげよう。そしたら…淋しくないと思うし」


 考えていても答えは出ることがないとカービィは思ったのだろう。賢明な判断だ。承認せざるをえない。
 私とカービィは穴を掘った。墓からあまり近くない程度に、だからといって遠くない場所に。いつもチビチビとリボンを馬鹿にしていたダークと…ダークに対してよくビクビクしていたリボン…。面白い組み合わせじゃないか。こうやって仲良く同じ土の中に還るんだ。あの世でも仲良くやることだろう。

 *

 埋めるのに時間がかかった。時刻はだいたい四時かそこらだろう。


「これから…どうするんだ?」

「わからない。…みんな死んじゃったんだもんね。
 ………なんで…僕が生きてんだろうね」


 フォローをしてやろうにも…いえない。
 確かに、事の発端といえばカービィの所為…でもある。だが、それと同時にメタナイトのせいでもあるんだ。

 言おうにも口が開かない。
 言えば…余計に気を落としてしまうんじゃないのかと思ったからだ。










 ……?


 かすかに…地が揺れたような気がする。


「ギャラ…」


 カービィが、先頭に立って、笑う。
 いつか一緒に過ごした、浅い岩の洞窟の辺りで、笑った。


「僕、この地を離れることにするよ」


 音もなく、カービィの頭上に、下から、後ろから、ぬっと、現れ、カービィの笑顔を陰で覆った。


「だってその方が…み ンッ…!」


 真っ赤な液が当たりに飛び散った。蝿を足で力いっぱい、勢いよく踏むような、あの感じ。ぶぢゅうぅって、液体が飛んで、辺りに、汚い汚い液が、飛ぶ、あの、感じ。

 かーびぃが、蝿に…なった…


「あ…………………っひ…!

 っわぁああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああっっっっっっ??????!!!!!!!!!!!」


 ごちゅごちゅと、音がする。まるで、はえが。踏みにじられたような、感じ


「…逃がしはしないよ」


 かげが、言葉を吐く。

 太陽がずれる。どんどんずれる。それだけ時間がたっている。そこでようやく分かった。カービィは踏みにじられたわけではない…。

 食べられてしまった。ようだ。そこに、いないから…。


 血が飛び散っただけで姿かたちはなく、…なぜなんだ。なぜ、だれだ。おまえは・・・おま


「………約束したんだァ…二人で、幸せに、オハヨォって、言い合える。ような、平和な場所へ行こうって…やくそく……お前らみたいなオッカナイ奴なんていない、二人だけの世界へ……!!!! けぱぱぱぱぱぱぱぱぱぱぱぱぁぁぁあぁっぁッっはははははははははははははははははぁぁぁぁあああぁあぁああぁああ!!!!!」


 目玉がどろっと出て、口からピンク色の何かと赤い液が滴る何かを垂らしながら、笑った。

 マルクソウル…生きて…いた…?


「ほらぁ! 見てみて! カービィが僕に抱き着いてんだぁぁぁぁ! もう怖くないって言ってるぅぅ! ゲハハハハハアギャラも来てって僕にお願いしてるよォぉ?! イイヨォ、シアワセ、シヤワセ! カービィが望むならなんだってシタゲる! コンナニ怖い奴でもカービィが望むなら、シアワセな世界に連れてってあげる! カービィが僕にアリガトッて言ってる! お礼なんていいよ! 僕たちは幸せな世界へ行くんだシアワセええええカービィガァギャラクティックナイトにしがみついてるぼくにおねがいしてる幸せ連れてイコってイイヨカゾクハオオイイホウガイイヨネ! アドレーヌモツレテイコウ! しゃどぉもだぁくもアドれぇぬもリボンも!悪役以外はいらない! カービィが嫌いな奴は僕らの世界にはいらない! さぁギャラクティックナイト行こう! 僕らの村へ! 暖かいパンもあるよ! 太陽の光がまぶしいよ! 争いなんてないよ! メタナイトなんかいないよ! 監禁部屋ないお城無いみんなが住める家! ミンナデスンダラキットサミシクナイヨ! 明日はどこへ行こうかな? みんなでピクニックに行こう! お弁当はアドレーヌ! 歌はリボン! 荷物はダークメタナイト! 保護者はギャラクティックナイト!楽しむのはカービィ! 殺すのはボク! キャハハハハハきっと楽しぃピクニックになるよ! ああ、ごめんねカービィ、もう疲れた? ああ! ギャラクティックナイトの足を引っ張ってる。なぁに? そうか! 早く連れてってあげたいんだね! 分かったよ分かったよ! 苦しまないように一突きで終わらせたげるからね! ぎゃらくてぃっくないとさぁうごかないでしずかししててねじゃないとカービィの望んだ、僕の望んだ村へ招待してあげないよ! あっはしゃははははははははははははははっはっはははははは」


 そんな…殺されたのか? カービィが…こいつに…

 なんで生きていたんだ。この解決されなかった謎は何だ、いったいどういうことだ!
 どうせ私は殺されてしまう。ならば…問おう。

 この世界は…いったい誰の視点なんだと。

 思考をめぐらす前に、マルクはわたしを貫き

 ころした

 マルクも、シアワセな村へ行くために自分の翼で己のからだを貫き


 世界は一つ村が滅んだダケとして終わってしまった。









「狐は望みます。この世界は終わらないことを。

 狐は望みます。第14102の英雄がこの世界を解決させることを」






imprisonment weather

2012年1月18日〜2013年8月16日
ここに、終了したことを表明する

全34話

 
 *(アスタリスク)


了 

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