imprisonment weather

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 昨日はなんだか眠れなかった。気づいた頃にはもう朝が来て窓から太陽の光が射し込んでいた。

 僕が時計をみた頃にはもう十時になろうとしていた。


「わっ、寝坊しちゃった!…メタナイトの所に行ってもいないだろうなぁ」


 僕が扉を開けたときだった。ぐしゃりとした感覚が足に伝わってきた。ぇ…と呟きその青くて綺麗だった草原を少し見渡せば血が草原にでっとりと付着している。その光景を前に僕は腰が抜けてその場に座り込んだ。


「うわぁあああああああああああああ!!!!」


 僕の叫び声がプププランド全体に響いた。

 その声に仰天した僕の家になんだなんだと野次馬のように寄ってくる。
 その光景に何人ものヒトが口元を押さえ後ずさりする。誰も僕には近寄ろうとしなかった。


「退くぞい!カービィ、叫ぶんならワシが起きない程度に叫…ドワァッ!?こっ…コレはなんぞい!」


 デデデが直々に来るなんて、余程僕の叫び声は五月蝿かったのだろうと思う。
 僕はまだ乾ききっていない血溜まりに手を漬け、狂ってしまえばいいような気になった。


「何をしたかは知らんが、カービィ、貴様は殺人罪で処刑ぞい!さあ、誰を殺した!」


 そんなの、こっちの台詞だよ。と鼻で笑う。頭がおかしくなってしまいそうな程嫌な鉄錆びたような血の臭いに眩んだ。

 布の切れるような音が聞こえた、野次馬は誰かの手によって追い払われる。そして僕の前に立ち、陛下とデデデを呼ぶ。


「待って下さい、陛下!」

「ん?メタナイトか。お前、昨日城にいなかっただろ?お前の部下達が探していたぞい!」

「は、私は重要書類を隣の村の長老殿に渡すために隣の村まで足を運んでいましたので…、ですが、私はカービィが殺しをするなどあり得ないと考えています」


 メタナイトは必死にカービィに罪はないと唱えている。
 僕は聞いたんだ。しつこいまでに扉を叩く音を、ずるずるひこずったような音を…。
 それを考えるとクラッと後ろにひっくり返りそうになった。――と、同時に僕が倒れてしまうことを知っていたかのように素早くメタナイトが僕の後ろに回り支えた。
 僕はそこで気を失ってしまった。


 ***


 私は気絶した彼を支え、頭を撫でる。

 可哀想に、

 私は自分にそう慰め掛けた。何故か、といわれても説明になりそうにもない。彼は一生かけても私の気持ちを理解してくれることはないだろうからだ。


「メタナイト、お前は散々これまでもカービィの味方についていたが、今回の事件は何の異論もないぞい。カービィはワシの部下を吸い込んだり等して殺してきたではないか。本当はとっくの昔に死刑を実行するべきだったが、お前が何時も止めるせいでその度に延長していたんだぞい!
 そしてこのざまぞい。これをどう言って庇う気ぞ「お言葉ですが陛下」


 すうっと息を吸い、言葉を続けた。


「私は村から帰る途中、カービィの家近くを通りました。時間は約深夜一時前後、カービィは部屋の電気を消していて、就寝についていました。私の部下より、カービィはその日ワドルドゥと遊び疲れていたと聞きました。そして、別の者からも何故かもの凄く颯爽と真っ直ぐ走って言ったと小耳に挟みました。それも何かに逃げるかのように怯えた表情で、とのことです」

「怯えた?…ノーテンキなことで有名なカービィが何かに恐れることは滅多にないぞい。これは気になる…。よし、早速兵士達を使ってこの怪奇事件について捜索させるぞい!」

「…は」


 デデデ大王は私の前から颯爽と失せ、城に戻っていった。

 よほどのショック…だったのだろう。カービィは目を覚ます様子がない。
 替わりに譫言をいくつも吐いてるみたいだ。

 ――私はその言葉に安堵した。


「そうか」


 私は安心してカービィを抱きしめた。


 ***


 水が一滴、ぽつんと僕の頬に落ちた。最初は泣いているのかと思ったけど、どうもそうではないみたいだ。目を覚ますと眩しいくらいやたら豪華な電球が部屋を明るく照らし、現状を晴らす。貴族のような赤い絨毯、窓の横の柱にある蝋燭の蝋が溢れるくらい満杯になった金の受け皿。机の上にある食べかけのサンドイッチ。

 起き上がると水色の布が床に落ちた。親切にタオルくらいの薄い布を体に掛けられていたのだろう。


「…誰かの家?」


 僕はソファーから降りて威厳感溢れる机に近寄った。
 溜まりに溜まった書類の山、羽のついた高そうなペンとインク、乱雑に置かれた本。

 一冊、古びて黒く分厚い端が金具でカバーされた題名のない本を見つけた。それにはいくつか付箋が挟まれていた。こんな古文がたくさん書かれていそうな本、興味なんて全くないはずなのに何となく開いて呼んでみた。



「【呪術の唱え】…心の内秘めたるは愛しき者の笑顔なり、その者、相思相愛なかれど、恨まんとせん。愛しき者の愛する者の身、引き裂くべし、その血、愛する者にかけるが良し。否や者、家の前にて血を捧げるも良し、さすればその者、我が手に入らん。我が呪術に間違いはなし」


 ふと、あの晩のことを考えてる自分に気づいた。手順が殆ど似ている。いや、完璧にその手順通りの行いが僕の身に降りかかったんだ。でも、ぼくが愛した者って誰?
 ――昨日、僕の叫び声で城中の人が集まった中で誰か来ていなかった誰かがいる。
 頭の内から血の気が引いていく。僕は本を閉じて扉に向かおうとした瞬間…。


「…っ?!」


 ガチャッと扉が開いて、誰かが入ってきた。おぼんの上に紅茶とシュガーをカチャカチャ鳴らしながら、なんとメタナイトが入ってきた。なんだか似合わない…。


「カービィ、起きていたか」

「めっ…メタナイト…。ワドルドゥ…って、何処にいるか知らない?」

「…どの、ワドルドゥだ?」

「サッカーが好きなワドルドゥだよ。僕、昨日そのワドルドゥと一緒に遊んで…「私が地下に捨てた」


「…え?」


 突然言われたその言葉に耳を疑った。今、なんて言った?冷や汗を垂らしながらもう一度聞く。


「ワドルドゥは…どこって…」

「地下に捨てた。カービィ、もう邪魔者なんていないから、安心してここにいなさい」







 激しくもうネタがないや\(^p^)/


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