imprisonment weather

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 ***


 その日から緊急の会議が多くなった。場所はデデデ城地下にてひっそりとそれは行われていた。その内容と言えば勿論カービィのことについてだ。人々はこの一ヶ月、カービィを見た人が全くいなくなったことで不安に思い、この会議を三日に一回、――プププランドではこんな事件は珍しいため三日に一度でも多く感じる――この会議にデデデ率いるメンバー、ワドルディ(×10)、バンダナワドルディ、ワドルドゥ、デデデ、メタナイトなどで話し合いを行っていた。


「皆、カービィが突然このプププランドから姿を消したことは知っているな。
 …まあ、ワシとしては邪魔者がいなくなったから清々するが…」

「大王様!カービィがいないと諸星が知ったら…我らの星を守る者は何処にいるんですか!」

「そうですよ!最近それに感づき始めた力を持つ星々がこのポップスターを侵略しに来るという噂を聞きました。
 早くカービィを見つけないと…大変なことになりますよ!」


 ワイワイガヤガヤ、意見を出したり抗議したり騒ぎ立てたり喧嘩をおっ始めたり。会議参加者達は冷静さを失いつつあるのだろう。どんなに草の根かき分けて探そうが見つかりはしない。例えて言うとすれば砂漠の中に透明なビーズを落としてしまい、それを探せと言うのと同等なくらい困難な作業と化している。


「う〜ん…、まぁな、あのカービィのことだからワシ等が必死に探している傍ら何処かでグースカ寝てるに決まってるデ。
 またプププランド全住民に訪ねて行くことから始めるぞい。もしかしたら何処かで遊んでるのかも知れんからな…」


 誰もが絶望に明け暮れたとき、扉の力強く開く音が聞こえた。皆はそちらに振り向き、何事かと入ってきた人物を見つめる。その日、珍しく会議に遅れて来たメンバーリストに名前を記されていない、シャドーカービィだった。


「…ギャラクティック・ノヴァに…頼んでみたらどうだ?」





 入ってきて第一声はそれだった。別に息を切らしているわけでもなく、興味がなさそうなわけでもない。デデデは不思議そうにしてその長い名前を呟く。


「ギャラクティック・ノヴァと言えば…」

「私が大彗星・ノヴァに頼み、世界一の戦士、ギャラクティックナイトを甦らせたことがある。…大彗星・ノヴァは何でも願い事を叶える力がある。しかし…、それをしたところで何になる」

「何…って、お前、カービィが心配じゃねぇのかよ。ああ、どうせ冷酷な仮面戦士様にとってはライバルもいなくなるし自分の邪魔だってされることもなくなる。なら好都合だろうな。いつも気取ってばかりで…、てめぇには情ってもんがねぇもんなぁ!!」


 ***


 シャドーカービィ。カービィと心通える大親友といえる奴。ちょっとした悪の心から出来たものだから口が悪く、特に私に対して姑のように嫌み嫌い、カービィから昔遠退けようと計った私こそ嫌いな奴だ。

 しかしコイツ、カービィの親友だからこそまだ生かしておくも、言わしておけば散々私を愚弄して…!優しいあの子と何故こうも性格が違う!!えぇ?どうなんだ!!その腐りきった根性、叩き直してやろうか!

 私がそう口にはしなくとも、目がそう叫ぶ。シャドーカービィこそ、それに苛立て、私の返答を待たずして陛下に向きかえった。


「今から星を巡れば最低一週間はかかるが…、どうだ?」

「確かにいい手ぞい。しかしなぁ…」


 ちらりと陛下が私を見た。何が言いたいのかわからなかったが、何となく私が意見を述べた方がいいと思った。いや、言わなくてはならないと、自分自身が気づいた。
 元より、もし自分以外の誰かが行き、カービィは何処に、もしくは呼んでこいと頼めば平然と大彗星・ノヴァは二つ返事で従うだろう。

 ――ならば?

 私直々が出向き、ギャラクティック・ノヴァを破壊せねばならない。それも、存在の跡形すらわからぬように、だ。もし私が行き、願いなど叶わなかったと嘘をつこうがまた別の誰かが検証しに向かう。そうなると計画は失敗だ。カービィは私から離れていってしまう、あるいは…。


「私が行こう」

「えっ?!メタナイトが?…まあいいデ。はぁあ…暫く何も襲撃が来ないことを願うしかないぞい」


 明らかにその言葉はワドルディ達を頼っていない台詞だった。
 しかし、上等じゃないか。ああ、受けて立とう。そうとなれば一度は行った道だ。そう容易くは忘れたりはしない。マントを投げ捨て翼を広げ、地下の道を通る。
 カービィは、…逃げたりはしないだろうか?しない、しない。半端自分に言い聞かせる。大丈夫だ。逃げたりする者か。あの子はあの日私を受け入れた。何処にも行かないと約束をした。何も心配なんてない。もしものことがあっても、あんな場所を見つけることだって出来はしない。暫くの辛抱だ。我慢してくれ。私が大彗星・ノヴァをぶち壊したら…いつになくきつく抱きしめてやる。5日…いや、私だぞ?行くのは私だ、三日で終わらせよう。三日でいい。私はやっと青空広がる場所に出た。そして颯爽と銀河めがけて上へ上へと飛んで行った。


 ***


 シャドーカービィは城探索を実行しだした。理由は特にない。ただこの辺りに、自分達に似た気配がさっきからするからだ。


「シャドーカービィ、まだ会議は終わってないが…もう今日は帰るのか?」


 即答だった。あぁ、とだけ呟き、出口とは逆方向に歩き出した。それに対してデデデは止めることなく、好きなように行動させた。
 左に曲がり真っ直ぐ行った先の角、さっき白い何かが見えた。でもそれはほんの一瞬で、はっきりとそれが何だったのかは分からなかった。


(…幽霊?)


 実際、そんなことあるはずないと信じている。しかし、あの影にどうも先程から気に掛かる気配にそっくりで、放っておくのが嫌だった。
 地下で窓もなく暗い場所、じめっとした空気に息が詰まる。長い廊下を通り、先程白い何かが通った道をそっと覗いてみる。そこには何もない、進むにも億劫そうに置かれた廃材がいくつか積まれていて、向かうにも少し廃材を片さなければなさそうだ。その先は行き止まりらしいのか、罰点の書かれた紙が目立ちにくい灰色の壁に貼られていた。


(ここより先立ち入り禁止…)


 白い影は遠の昔に空気にかき消され、気配は全くなくなっていた。狐に化かされたようだとはこのことかと思い知らされる。
 ずっと向こうを見ていても途方の影は微動だにせず、自分の身体が逆に吸い込まれてしまいそうな気味の悪さ、異臭に似た空気も流れてきて、そこはヒトが入ってはならない、異空の世界があるような気がした。シャドーカービィはそこから逃げるように立ち去り、デデデ城を後にした。
 憑き物がふっととれていった、そんな感覚さえしてしまうくらいに、あそこは異端の地へと姿を変えてしまっているのか。


(一体カービィは何処に行ったんだ…)











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