imprisonment weather

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 おかしい。
 最近、僕の日常はこの一言で丸く収まる。
 メタナイト(?)に頼めばなんと外に出してくれることが多くなった。あんなに外に僕を出すのを拒んでいた彼が、どうしてこんなことをするのか、全く予想がつかなかった。


「…そう易々と僕を解放してると、僕、逃げちゃうよ?」

「……………………………」


 もちろん、これはハッタリにすぎなかった。僕はこれを外に出さてもらう度(過去二回)に尋ねていた。逃げ出すことなんて、まずなかった。…最初、鎖は毎度僕の足にある鍵穴から鍵をはめ込み開ける、至ってシンプルかつ簡単なものになっていた。しかし、何故かそれをメタナイトは無視し、自前の剣で叩き切っていた。その所為で鎖は使い物にならなくなり、代わりにロープで括るというとんでもないスケールダウンの代物に変わっていた。
 これならいくら何でもあの破片を使ってロープを切断して逃げることが可能だ。…でも、僕はあえてそれにノらない。

 僕はこっちの"メタナイト"には怯えない、寧ろナメているくらい接しやすい。
 …でも…、もしあっちの、表の"メタナイト"が現れたなら、僕は…あいつに対してただ隅っこに身を固めて怯えているしかできないだろう。

 外に出る、と言っても監視の目を逃れられなければ外には出られない。何てったって僕は今何処かにいる。ここにいないという設定だから。仮にみんなの前に現れてやあやあ現れてみなよ。何処かの青春ドラマではない限り、僕はきっとみんなからリンチを受ける。痛い思いをしなくちゃだめだ。そんなことより、僕はみんなの目を凌いでいたい。一度姿をひょろっと現して、また消えたとなれば、もうみんなも流石に危機感、諸星に伝わり攻撃を仕掛けてくるだろう。

 早く外の新鮮な空気が吸いたい。どうせなら壁をぶち破ってくれたらいいのに。ああ、ここは地下だから意味ないなぁ…。先頭にメタナイトが先に歩いて人目を気にしつつこっそりと進んでいった…。その間、今日も都合よく誰とも遭遇せずに外にでることに成功した。
 ようやく地下から出たと思い、深呼吸をする。このメタナイトは開放的で…全く束縛しない。
 そういえばこのメタナイトは何故一言も喋らないのだろう?


「ねえ、メタナイトぉ…?」

「…………………………?」

「何で何も喋らないの?」


 微かにピクッと体が動いたところを、僕は見逃さなかった。


「君は…本当にメタナイトなの?」

「……………………………」


 問いかけたと同時に上から隕石の如く何かが僕の上に落ちてきた。――と、同時にメタナイト(仮)が素早い身のこなしでそれを己の剣でなぎ払い、僕を守った。


「……!!?」

「……………………………」


 ドォオオ……ン…

 それは斜め下に落ち、ものすごい量の砂煙と爆裂音をあげた。
 城の近く。…ならば人はすぐこの音を何事かと思いかけつけて来るだろう。なら僕の姿は明るみにでてはいけないと思…う?
 メタナイトは僕の手を掴み空に舞い上がった。その時、白い物が翼からこぼれ落ちた。個体でふわりとした…あれは…羽?

 詳しく見る間もなく空高く飛び上がり、森の向こうにその場から逃げるように羽ばたいていった。


***


 岩の砕けるような音がする。パラパラパラパラ…。おかしい、間違いなく僕はカービィめがけて落ちたはずなのに…何者かに邪魔された?
 翼を広げその砂煙から飛び上がり、辺りを見回す。白い…、天使のような羽…。まさか…あいつがここにいるのか?いやしかし…、………面倒になる前にここは退こう。そして、すぐにカービィを捕まえに行かなくちゃ。もしかしたら第三者が僕の前にカービィを取りに来たのかもしれない。

 僕はカービィが向かった方に飛んでったんだ。カービィだってあんなに早くは飛べないハズなんだ。…第三者がカービィをもって逃げた。またか。横取りしやがって、僕の玩具なのに…!


「待てぇえ!逃がすもんかぁあ!!」


 ***


 すごい勢いで彼は僕の手を突かんで飛び去る。
 後ろから叫び声のような恐ろしい声が聞こえる。振り返り僕はその姿を見てとらえ、2拍したところでやっと誰なのかわかった。


「マルク…!」

「キャァッハハハハハハハハハハハ!カービィ、そいつはメタナイトなんかじゃないのサ!
 そいつは銀河最強の戦士と言われる、ギャラクティックナイトなのサァア!」


 ギャラクティックナイト…?
 そういえば前メタナイトがそんな名前のを倒したって自慢していたような…。え?メタナイトじゃない、ってマルク…

 今までメタナイトと思っていたそのヒトはぴたっと逃げるのをやめ、マルクに振り返った。マルクもまた、その場に止まった。


「そろそろあんたも…カービィにいつまでも騙してちゃ可哀想ぉだろぉ?」


 マルクが一言かけるとギャラなんとかは自分の羽を掴み、マントのようにその姿を露わにした。
 天使のようなきれいな翼に角、十字に切れ込まれた仮面。そして、大きなランスに盾(僕はいつの間にやら盾の持ち手を掴んでいた)。

 なんか…メタナイトよりずっと派手でカッコいいイメージがした。


「いかにも…、私はギャラクティックナイト。銀河最強の戦士と名乗るに相応しい力を持つ戦士だ」


 ぁ、声が全く違う…。そうか、だから黙ってたんだ。

 ギャラクティックナイトは僕を抱え、キッと仮面越しでもわかる睨みを利かせ、マルクを睨みつけた。


「…星の戦士は私が貰い受ける。マルク、貴様は潔く立ち去るが良い。私のランスの餌食になりたくなければ、な」

「ほざきやがれ!それは僕の物だと何度言わせりゃ気が済むんだ!死ねぇえぇええ!!」


 マルクは睨み返して攻撃を仕掛けてくる。しかし、ランス使いのギャラクティックナイトはひらりとその攻撃をかわし、ランスをマルクに突かず、殴るようにランスを扱い、体にぶつけた。


「ぐ…っは…!?」

「…貴様は少々自信過剰な性格のようだ…。自信を持つことはいい、だがしかし、己の力の無さを、もっとよく客観的に見てみればどうだ。今の攻撃の仕方はまるで子供だ。計画性がなっていない。もっと先を見据えて、私に挑むべきだったな。
 そんな弱者の命は私は取らない主義でね、命は取らないでおいた。今後、また私に挑むのならば、もっと力を蓄えて攻撃を仕掛けるのだな。…では、私は失礼する」


 流石にこれはマルクはものすごく傷ついたと思う。あれだけプライドの高いマルクのことだ、説教もされ、挙げ句の果て子供のような攻撃と罵られたのだから。
 マルクは下を向いて歯をガリガリと歯軋りしていた。

 ギャラクティックナイトは僕を引き寄せ、またどこかに飛びだした。

 マルクはそこから微動だにせず、ずっと歯軋りをギリギリ鳴らしていた。













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