imprisonment weather

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 カービィを目の前にして突然黒い影が走って行き、次の瞬間そこに目を落としたら彼はいなかった。何者かが奪ったと思い、辺りを見回して空を見上げたらそいつがカービィを私より先に奪い取っていた。


「貴様…っ!!ダークメタナイト!!!?」

「……フッ、…気づくのが一歩遅かった、な」


 ダークメタナイトはギャラクシアに似たそれを腰から取り出し、私に向かって一振りしてソードビームを放ってきた。
 が、軌道を見る限りソードビームは私の上を通り過ぎるだろう方向へ飛んでいた。


「腕が落ちたのではないのか?飛ばす位置がズレているぞ?」


 失笑しながら敵の方を睨みつける。…?そういえば…アイツの腕の中にいるカービィの様子がおかしい、ぐったりとして…


「貴様に言われる筋合いはない」


 ダークメタナイトは剣を収め、ウィスピーウッズの森に向かい飛んでいく。無論、カービィを片手に抱えて…。


「か…っ!」


 背景に何かが砕けるような音がし、振り返った。先程のソードビームがワドルディ達を切り裂いていた。当然血と真っ二つに裂けた体が彼方此方に吹き飛び、ギャラクティックナイトを押さえていた力も弱まり、当の本人は血に染まった翼を広げ、まだ少しくっついたワドルディをそのランスでなぎ払い、天高く飛び出し、颯爽とダークメタナイトの行った方向に飛んでいった。


「くっぅ………!!追え!追うんだぁあああ!」


 逃がしてはいけない。あんな質の悪い奴らにカービィを連れ去られた。平静など装っていられない。
 斬り殺されなかった残りのワドルディが慌てて後を追いだす。しかし、そこにあるはずもないマグマが流れていた。足の短いワドルディには飛び越えるなんて無理なくらい幅のある…、少し向こうを見渡すとベレー帽を被り、片手に筆を持った人間に似た少女と、小さな羽を生やした妖精が隣でマグマの向こうを、ウィスピーの森に向かっていた。
 あれは…アドレーヌとリボン…!?あの二人も何故…?

 マグマの流れからして、根源はすぐ傍の岩壁しかなかった。マグマの流れとは逆の向きに走っていき、キャンバスがあるのに気づいた。岩と岩の間からマグマが流れる絵。そのマグマから本物の溶岩が流れ出している。


「くそぉおおおおおおおおおおっ!!!!」


 怒りにまかせて無造作に剣を振り回し、跡形もなくキャンバスを切り刻み、マグマを二度と出ないようにした。だが急激にマグマは冷めて固まることなく、まだ何日かかかりそうな状態だ。
 私なら空を飛び、今なら追いつくことも可能かもしれない。…だが…、

 今私についてきてるワドルディが邪魔だ。何故あのソードビームで死に損なった奴らは片足をなくしてまで私の言うことを聞くんだ?その忠誠心が邪魔だ。とっとと死んでいてくれればよかったんだ。
 片手に持つギャラクシアを見て、私は生き残ったワドルディ達がいる方に向かった。ワドルディはおどおどしながら未だに何をすればいいのかわかってないらしく、その場で私の指示を待っている。いちいち指示を出さないと動けないか…。無知脳な奴らだ。見ていて腹が立つ。
 残ったワドルディは約20数名といったところか…


「お前達はやはり何も出来ないクズの固まりだったか」


 小さく呟き、一番近くに居たワドルディにむかい自分の剣を横に振り払った。ワドルディはキョトンとしていた。だが、その表情とは裏腹にぷくぷくと赤い血が表面から出てくる。切った流れと同じ場所に赤い線も浮かび上がり、ゆっくりずるずると切った上の体が右に傾き、落ちていく。そして、とうとうその切断された上の体はごとりと表情を変えずに落ち、真っ二つ分かれて動脈から気が噴水のように上がっていた。


「〜〜〜〜っ!!!?」


 別のワドルディ達は状況を整理しきって解ったせいか、慌てて彼方此方に散り始め、私から逃げ出した。


「貴様等が鈍臭い所為で逃げられた!どうとしまえをつける気だ!ぁあ!?」


 プライドが私は悪くないと囁く。悪いのはもっと早くに気づかなかった兵士達、ワドルディの所為だ。と。

 一人残らず殺した。辺りは無惨にも血だらけになり、辺りは遺体とバラバラの破片が飛び散った血と肉の散乱した場所と化していた。


「……、カービィ…」


 遺体と飛び散った臓器を、ブジュ、グジュと踏み荒らし、空を飛び、ウィスピーウッズの森に消えた誘拐者の方に向かい飛び発った。


 ***


 ウィスピーウッズの森を抜けた遙か遠くに位置する、鬱蒼と木々が生えた空からも地上からも見えづらい場所、コールォ・サキュバの樹海。
 ギャラクティックナイトにダークメタナイト、リボンとアドレーヌは事前にその樹海の入り口を集合場所に選び、ゆっくりバラバラと集まり始めた。


「…ここまでくれば、今は何とかなるだろう」


 最初に入り口に着いたのは空から華麗に降りてきたダークメタナイト。腕にいるカービィは未だに気絶したままで、暫く起きそうにない。
 そしてもう暫く経ったときに来たのがギャラクティックナイト。こちらも空から降りてきた。


「………よく、あの者達と仲間割れせずに来てくれた。感謝する」

「ふん、生意気な小娘が私を馬鹿にしたものでね、…私自身腹を立ててまんまと女の思い通りに話しにのっかってしまっただけだ。決して乗り気ではないことを理解しておけ」

「……素直ではないな。
 さあ、カービィは私が抱こう。渡しなさい」


 ギャラクティックナイトはダークメタナイトに両手を差し向けカービィを受け取ろうとする。しかし、ダークメタナイトはその場でじっとし、暫しカービィを見つめた後、ギャラクティックナイトに背を向けた。


「…いや、私が抱えておく」


 月は斜め下に傾き、そろそろお天道様と交替しようとしていた。

 もう暫くして、二人の協力者が走ってくるのが遠くから見えた。リボンとアドレーヌだ。おーい、とアドレーヌが叫び、二人に近づいて行く。


「………っはぁ…はっ……はぁっ……!…二人とも…っ、早く森の中に行った方がいいよ」

「……何故だ?」

「メタナイトさんが…、全部、みんな殺しちゃったのが見えたの…っ」

「………」

「全部…?………っ!まさか、さっきまでギャラクティックナイトを抑えていたワドルディ達のことか?!」

「多分…ダメタくんがカーくんを助けたから…いや、あっちは奪われたと思ったのかも…。怒ってワドルディ達に責任をなすくりつけて…ほらっ、あのヒト、プライド高いから…」


 二人の仮面の騎士は互いに無言でアドレーヌの予測を聞いていた。ギャラクティックナイトは城に潜入したさいに見たカービィのトラウマと言うべくメタナイト(私)への対応を思い出した。カービィはきっと恐れている。確かに今の奴の行動には以上と言わざるを得ないことが数限りなく多い。恐ろしい執着心…。愛されようと監禁して自分一人を見させようと洗脳させるような行為…。
 ギャラクティックナイトにはそんな経験をしてきたカービィを思うと、可哀想と言うより寧ろ………


「アドレーヌ。私、前ここに来て事前に見つけたこの大人数でも丁度住めるようなおっきな穴を見つけたけど…行く?」

「流石リボンちゃんだね!よし、案内して!」


 リボンは道を思い出しつつ木々の間を通って行く。見失わないようにと後の三人も追いかける。

 この話は、まだ始まったにすぎなかったのかもしれない…。








コールォ・サキュバの樹海は勝手に自分が考えた場所です。
 なんかこう…ずっと向こうって感じがするじゃないですか(笑)
 アニメとゲームをかけて2で割ったようなオリジナルな話で、書いてる当の本人でもってわかりづらい…





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