imprisonment weather

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 某日の深夜、誰かの家にある消し忘れたままのテレビからノイズ混じりにある番組が放映された。



――…では、本日心理学者の***先生に来ていただきました。

「初めまして、**大学精神・心理学の教授を務めております。***と申します」

――さて、今回のテーマは『以心伝心』についてです、が…。
 先生、一体これは…?

「意思疎通というのを聞いたことがあります?このボードをご覧下さい。…考えていることが通じ合う、つまりは以心伝心とほぼ同じ解釈ができますね?」

――はぁ…。

「私たちの研究は精神、心理、意思とそれぞれテーマが異なることを日々研究し、その中の意思について今回教えたいと思います」

――…はい。では、こちらのボードをご覧下さい。プププランドの住民の方々にご協力いただき、約半数の方からアンケートをいただきました。内容はこういったものです。えー、『あなたは兄弟、もしくは家族や恋人と考えていることが全く同じになったことがあるか』についてです。結果はこうなりました。……はい、ご覧のように、『なったことがある』は3%、『なったことがない』は81%、『わからない・その他』は16%となりました。先生、いかがですか?

「私は意思についての専門家なので矛盾感が湧くでしょうが、極端に言ってしまえばこのようなことはン百分の1あるかないかの極稀のことなんですね。例え双子であろうと意志が違うときは多々あります。
 最近は影から派生する自分と姿が一緒の生き物がいるようなことを聞きますが…。よく言われるのは意思が疎通するというデタラメです」

――デタラメ…ですか。

「先ほども言いましたが、双子でも意思が疎通する事は滅多にありません。ましてや、そんな影が考えを共にするといういい加減な情報はありません」

――なるほど、では、もしその影もしくは本体が考えを受け取った場合どうするんですか?

「そんなことはありません。酷く言えばただの妄想でしかないと思います。先ほども言いましたが、例え双子であろうと意志が疎通する事は滅多にありません。簡単に言えばそれぞれ個体であり自分用の脳も所有しているわけですからね」

――……お時間がきてしまいました。それでは、今日のまとめのコーナーで…ザー、ザーーーー……


 テレビからは砂嵐が流れだした。


 ***


 水は透明。だから何だと言うのか?
 もしこの川が鮮やかな黄色やエメラルドに輝いていたとすればどれだけ美しかったろうか?ましてや虹色なんて…、酔いそうなくらい最高じゃないか。
 でもでも、そんな黄や緑以上に綺麗な…もう虹なんて足元にも及ばないくらい!そんくらい綺麗な色があるのをご存じ?

 ま、明確的理解知能が高い君達にならそんな簡単な問題、分からないわけがないよね?
 赤だよ、赤。それもやたら濃くて原色より黒く濁った…もう虹なんて足元にも及ばないくらい!…あ、また頭イカれたこと言ってるって思ったでしょ?
 …僕には綺麗事ばかり言う君たちなんかより、ずっと正直で素直なことを言ったまでなのに。嘘で結い編んだドレスを綺麗と囁くだなんて。趣味が悪いにも程がある。


「…?シャドー、今何か言った?」

「へ?…あぁ、あははは。いいや、何にも?」


 ここに来てからボクは気分がいい。いや…正確に言うと、カービィのお陰で、だと思う。
 何か知らないがカービィを見てるととても幸せな気分をとっても味わえた。さっきまでの鬱な気分が嘘みたいだ。

 さっきカービィは叫んでないって誤魔化してたけど…絶対に嘘だ。何て言ったって、カービィは"僕"だもの。分からないことなんかない。
 …そうだ。悪いのは全部アイツのせいだ…。カービィが何をしたって言う?なぜカービィがこんな目に遭わなくちゃダメなんだ?
【疑えーーメタナイトはいずれカービィを壊す気だ。殺す気だ。ギャラクティックナイトを信用するな。信用させて信用させて…最後に裏切る気だ。ああ、間違いない!ダークもだ。メタナイトの化身なんだ、奴は手っ取り早く、さっさと殺るべき!あの女とチビは魔性に決まってる。汚らわしい!裏できっとカービィを操ろうと企んでる。そうに決まってる】

 …やはり結論は一つみたいだ。今やカービィを守れるのは僕だけ…。なんとか間に合ったんだ。僕は。きっと僕があの場にさっさと来なかったら…アイツ等にカービィは酷い目に遭ってた。ボクはカービィを救ったんだ。そうだ。そうなんだ!


「クククッ…そうに決まってる………」

「し、シャドー?どうしたの?ずっと俯いてるけど…お腹壊しちゃった?」

 「あ、あぁ…。いや、大丈夫だよ、カービィ」


 つい僕のせいで心配かけてしまった。僕がこんなのでどうする?
 まるで口から内臓を全部吐き出してしまいそうな気分になった。守るんだ。腕がもげようと足が切り落とされようと、…そうだ、なんなら僕がカービィを食べれば誰にもまず殺されない。あの笑顔を、姿をしぐさを守りきることが出来るんだ!

 …でもさ、いい案だけど保留だね。今ここで実行してもいい。でもだとしたらそれと同時にもう二度と彼の姿を拝むことがないんだよな?…じゃあやっぱり無理なのか?………いや、まだ手はあるさ。殺されかけたり、連れ去られる間際に僕は最後の手段として吸い込んで丸呑みにしちゃえばいいんだ。ああそうそう!咬みにじることも忘れずに…ね。
 フククキャキャ…!!今から楽しみだよ。カービィ。君はとっても美味しいんだろうね。ゆっくり胃液で溶かして姿形丸々僕のものに変えて…まさに一心同体。あ、だったら守るべきものが増えちゃったね。

 僕を守ることも重要だな…。


「…カービィ。ほらみろ!魚を捕まえたぞ!」

「わっ!素手でだなんて…凄いなぁ…。よし、僕もやってみるよ!」


 必死に水を掴むその姿は実に平和的で

 アイツらから守るんだ。この笑顔を…カービィ…。









 

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