imprisonment weather

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 僕は以前の記憶がない。
 この世界を何度も救ってきた勇者ということは自分でもなんとなく自覚していた。

 でも…
 ここ数日間の記憶が全くなくなっていたのは明らかな真実だった。


「カービィ」


 薄暗い部屋の外から囁くように僕の名前を呼んだのは誰だろう。
 どこか懐かしい鉄の扉の前で僕は誰かと呟く。


「入ってもいいか?」

「入ってもいいけど、ここはとても息苦しいよ」


 そう言うと、何か驚いたような声が聞こえた。重々しい鉄の扉はゆっくりと開き、声の主が入ってきた。

 彼は仮面を被り、蒼い服を着ていた。
 彼は…何処かで見たことがある…。どこかで…


「カービィ、私を見て何も思わないのか?」

「えっ…?
 ………っ、ぅぅっ…」


 この声を何処かで聞いたんだ。どこかで…
 何度も、聞いてきたんだ…思い出せ…思い出せ…


『ただの*****の為に涙を流すな。
 …泣くなら私の為だけに泣け。…いや…?やはりカービィは笑顔が似合うから、泣くのはよしなさい』


 痛い。頭が割れるように痛む。僕が蹲っていると前にいた彼が駆け寄り、僕の身を案じて手を伸ばした。


「かーびぃ!どうした?頭が…痛むのか?」


『カービィ、帰ろう?』


 瞬間、スイカを割るがごとく頭の痛みがなくなった。
 少しだけど…思い出した。僕は呼吸を荒げながら、上を向き、にっこりほほ笑んだ。


「ただいま…!メタナイト!」


 ***


 一瞬、カービィの笑顔に冷や汗が出たのはどうしてだろうか?
 彼はずっと私という生き物を避け、ずっと恐怖に怯えていたはず…なのに…。


「どうした…私が恐ろしくないのか…?」

「なんで?そんなことよりさ、僕と遊ぼうよ!ずっと退屈してたんだ。それと、ここはどこなの?」


 私がおかしいのか…はたまたカービィがおかしいのか…。
 どちらにせよ、これは私にとって思いがけない強運かもしれない。


「カービィ…ここはお前の家だ。忘れたか?…、シャドーやダークに連れ去られたお前をアドレーヌとリボンが救い、私に預けたんだ」

「そうだったの…?…なんだか頭がガンガンして思い出せないや…。じゃあ、アドとかリボンちゃんはどこにいるの?」

「………リボンはそのまま何処かへ行ったが…。アドレーヌは少し離れた部屋にいるぞ」

「本当?!じゃあ、行くよ!どこなの?」

「私の後ろを着いてくればいい…、さぁ、行こう」


 最後まであの小娘は私の邪魔をしようとするはずだ…。ならばの小娘に絶望を与えればいい…。
 許せ、哀れな人の子よ。これも運命と受け止めるのだ。


 ***


 僕はピッタリ彼の後ろについていた。辺りは薄暗く、空気もまずくてとても重い。


「ネ、ねぇ…本当にここにアドがいるの?」

「なんだ…?私が信じられないのか?

 …カービィ、少しの間ここで待っていてくれないか」


 彼は突然後ろを振り向き、僕にそう言った。多分このメタナイトの前にある扉が…そうなのだろうか?

 ――痛っ…。


「どんなに騒がしくなっても入るんじゃ…ないよ」


 そういう彼の顔はとても優しく、どう見ても「ダメ」という顔ではなかった。


「………?…ん?」


 鉄の扉が閉まって数分後、何か騒がしい声が扉の向こうからし始め、僕は入らなくても聞くくらいなら…と思い、聞き耳を立てた。

「……をつくな!どうせ開放する気なんてお前にはさらさら…」

「…、出る気はないととっていいんだな?」


 一体何を話しているんだろうか?解放って…?

 ――ぅ…痛い…。

 怒声のような声はさらに高まり、この暗い廊下に少し響いた。


「そうよ!その代わり、あたしがこの枷からどうやっても逃げだして…カーくんを連れてここから逃げてやるんだから!」

「知らない方がいいというときもある。…今のお前には、その言葉がぴったりとお似合いだな…」


 カーくんって…もしかして僕の…?!いや、それよりも…枷ってことは捕まってるんだよね?逃げるって…どういうことなの?!

 扉を開けようか…そう迷った時だった。


「ギャぁアアアアアアああアアアアああアアああアアああああアアああアアああああああアアアアああアアアアああアアアアアアアアアアアアアアああああああアアああアアああ!!!!!!」

「ひっ?!」


 僕は扉の向こうをすぐに想像した。いったい何が起きているんだと。声の主は…?!

 僕が扉を押しながらあけたときだった。


「ドージデェッ?!欲しいモンはもう手にはいッたんだろぉ!!なのになんでまだアタシにこんなつらい思いサセンダヨ!!死ね!死んでしまえ!殺せよおお!!」


 その言葉は…さっき僕を逃がすとか逃がさないとか言ってた…アドレーヌだった。
 アドレーヌは狂気に満ちた目をしていて、まるで僕を物みたいに言っていた。僕のせいでアドレーヌは見知らぬ何かがあって…僕のせいで僕を憎んで…僕が…ボクで…!!!!

 すると、アドレーヌに向いていたメタナイトが振り返り、僕に言ってきた。


「どうだ、カービィ。これが今までみんながお前に思ってきた言葉だ…」

「ッ?!!!か…ビィ…?!」


 最初からこれを聞かすのが目的だったように、メタナイトは満足げな声で…言っていた。


「さぁ…仕上げだ」


 メタナイトはそう呟いた後、僕の前からどけた。


 あ、あぁ…あぁあああぁぁああぁあぁぁあああぁぁああ!!

 僕は見ちゃいけないものを見てしまった。あああああああああああ、あああああああっあああ…。









中途半端




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