小説2

□こんなに美しい日は百年に一度
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※企画リク メタカビで鬱とメンヘラのタグがつく物






 僕はある日、メタナイトから携帯をもらった。
 僕は「もう持ってるからいいよ」と言って返そうとしたけど、彼は受け取ってくれなかった。その日はそれで終わった。

 でも、別れてすぐ後のことだった。

 〜♪ 〜〜〜♪

 早速メールが来た。既にメタナイトはある程度の設定してくれていたおかげで楽できそうだった。

(以外と機械に詳しかったんだ…。いや、そうじゃなきゃあハルバート作れないよね…)



 xx/11 21:44
 From:Meta
 no title
−−−−−−−−−−

 受け取ってくれてありがとう。
 私とそなただけの携帯だ。

 大事に使ってくれ。

−−−−END−−−



 そっけない文章はどこか温かみのあるように見えた。

 次の日から、僕達はそれを唯一の通信手段として毎日やり取りをしていた。毎日毎日。
 …でも、そこである異変に気付いた。

 ある日のことだ。台風の影響で電波が遮断された日のこと。

(うわー、凄い風…。あ、あそこなんて電線が吹っ飛んでる。危ないなー)

 電線で思い出したけど、このケータイ、台風の日は全く使えないんだろうか。ずっと圏外のままだ。
 もとより、あれみたいに電線も吹っ飛ぶ風の強さだ。電波を送ってくる元の場所自体、復元に手間取ってるだろう。

 しかし、部屋の中で何もせずいるのは実に暇なものだ。僕は何かないかベッドの下を探ってみた。ゴミにオモチャに缶詰。と、なかなかさまざまなものが落ちていた。
 さらに奥を探るとガッという音とともに安定感ある重みをもった堅いものが少し奥に押された。

(なんかあった)

 僕はさらに手を伸ばした。腕(というか手)が短いのってつらい。
 堅い固型の物を掴み、僕は息を二、三回大きく吸って、思い切り引きずり出した。
 軽く埃っていたようだが、それはラジオのようだった。しかも、百回ほど回せば約一時間聴けるというぐるぐる回して発電するタイプの。

(こんなのがあったんだ。天気予報、やってるかな…)

 そもそも電波を拾うほどの力が残っているのか。

 ガ…ガガ…"このよ"……キュィィ…ガ…ガ…"ツ…が…""それ…あ"…"そ…""それでは、今日の天気です""今日は一日台風で外に出られる状況ではないので、皆様、おうちの中に居ましょう。明日には、晴れる予定です""次は、占いのコーナーで…"ガー…キュルルルルル…ブツッ

 占いコーナー聞く前に壊れた…。
 とにかく、今日は一日台風なんだ。

 おとなしくしていよう…。





 〜♪〜〜〜♪

 〜♪〜〜〜♪

 〜♪〜〜〜♪

 …五月蝿い。

 いつの間にか朝になってた。僕は携帯のメール着信音に起こされて、ベッドから降りた。

 〜♪〜〜〜♪

 また携帯から音が鳴ってる。どうしたんだろう?

 僕は携帯を手にとって中を覗いた。

「?!!!」

 どういうこと…?



 新着メール


 143件

 すぐ入れ替わるように新着メールの数字は変わった。144…145…僕は何事かと思ってまずは、受信フォルダを開いた。
 すべて、メタナイトからだった。

「な…何?」

 自然と少し声が震える。あるメールの一部を開いた。
 昨日の15時30分に来たものらしい


  
 xx/12 15:31
 From:Meta
 no title
−−−−−−−−−−

 そういえば、ラジオをベッドの下に
 置いといたままだ。

 使ってくれて構わない。

−−−−END−−−



 一見普通のように感じた。でも、僕はすぐに恐怖を覚えた。

 なんで「ラジオがベッドの下にある」って知ってるの?
 置いといたままっていうのもな…に?
 僕はメタナイトを一度も家に招待したことだってないのに…。

 何かの間違いだと、無駄な願いを込めながらそのメールを削除した。
 一件一件読んでるときりがない。僕は15時以前のメールを拝読した。



 xx/12 14:13
 From:Meta
 no title
−−−−−−−−−−

 何で返事してくれないんだ

−−−−END−−−


 xx/12 14:16
 From:Meta
 no title
−−−−−−−−−−

 寂しい殺す

−−−−END−−−


 xx/12 14:20
 From:Meta
 no title
−−−−−−−−−−

 送付ファイル■xx11-1419

−−−−END−−−



 悪寒どころの話じゃない。僕は携帯を投げ捨てた。どうせ全部こんなメールだ。僕を殺すと書いたメール…。それにこのファイル…。
 リストカットの写真だった。しかも、自分の腕の…。生々しいまでの血に、殆ど恐怖さえ忘れていた。

(ダメ…怖い…いやだっ…!)

 突然電話が鳴りだした。
 着信音は穏やかなオルゴールの音色。…でも、そのオルゴールの音はおかしかった。ところどころギギッという変な音や何かをボソボソ呟く声が聞こえた。その音色がずっと鳴る。音もノイズまがいのようなものも交じり、気味が悪かった。
 もちろん、電話をしてきた相手も…メタナイトだった。

 僕は正直でたくはなかった。さっきまであんなメールを見たんだ。出る方がおかしい。
 音楽はやまない。この気持ち悪い音楽は止まらない。僕は生唾を呑み、そろりとその携帯に手を伸ばして、通話ボタンを…押した。

「も…もしもし…」

 声が震える。向こうは嫌に静かで、でも、あのオルゴールのようなメロディがずっと遠くから聞こえた。正直、早く切りたい。僕はなんでこのヒトからこんなケータイを受け取ったのか、不思議でたまらなかった。
 少ししても、向こうからの声は全くなかった。あの気味の悪いオルゴールが鳴ってるだけで、それ以外は何もなかった…

 小さく息を吸う音がした。

『せっかくそなたに捧げた携帯、投げないでおくれ』

 毛穴という毛穴、すべてがぶわっとなった。

 なんで…知ってるんだ?いや、ただあてずっぽうで言っただけでは…。
 聞きたいことがあっても、僕はどうしてか口を開けないでいた。

『あの写真、どうだった?とてもきれいに映っていたろう?』

 "あの写真"なんて他にもある。"あの写真"なんて他にもある。"あの写真"なんて他にもある。"あの写真"なんて他にもある………!

『手首、痛かったな…。でも、これくらいしないと。そなたには私の全てを見せるよ。
 だから、私を好きになってくれ。嫌いに…させないから』

 限界になって電話を切った。写真のことを知っていたのはまだいい、携帯を投げたことを知っていたのもまだいい。
 …コイツ、喋っていないときはとても小さな声でずっと「寂しい」と息継ぎをすることもなく囁やいていた。

 さらにメールの音が鳴る。中を確認すると、写真が送付されている。
 またメールが来た。それも写真が送付され、中はきっと…。

「ぅ…あ、…く…ッ!!!!」

 僕は携帯をへし折った。元はと言えばこれは僕のじゃない。僕が損をすることなんてなかった。

 へし折った携帯を僕は窓から投げ捨てた。

(もう・・・だいじょうぶ)

 安心した時だった。今度は…あの昔使ってた携帯が鳴りだした。

(そんな…?!電源切ってたはず…)

 さらに嫌な汗が出てくる。僕は新着メールを開いた。今度は…、何のファイルも送付されていないようだった。



 xx/13 14:44
 From:Meta
 no title
−−−−−−−−−−

 そんなにこの携帯で私とメールが
 したかったんだな。
 最初からそう言えばいいのに。
 ここじゃあ私はさびしい。

 ドアを開けてくれないか

−−−−END−−−


 ドアを…

 扉をノックする音がした。
 声はしなかった。ドアノブを開けようとしていた。鍵をかけていたおかげで入られないで済んだ…が、壊れるんじゃないのかと言わんばかりにその扉の向こうの奴はドアノブを動かしていた。金属が擦れる音が、ガチャガチャガチャガチャ鼓膜に錆が出来たような気がした。

「…っ…帰れ…」

 ついにそいつは扉を殴り始めた。僕の気なんてお構いなしに。そいつは扉を殴って…。
 みしっというヒビが入る音がした。
 まるで世界の終りでもやって来たかのような、そんな気持ちが狭まってきた。

「カービィ」

 扉のすぐ向こうから声がした。

「開けてくれ。寂しいんだ。お前が携帯を折っちゃったからそなたともう連絡取れない。お前はきっともう一つの携帯は折れないだろう?なんと言ってもみんなとの思い出だものなぁ…。
 なぁ、開けてくれ。少し話をしよう。寂しいんだ。手首が痛いんだ。そなたが手当てしてくれ。これも元はそなたのためにしたことなんだから。
 …分かった。今度からそなたの家に忍び込まないから。それでいいだろう?…なぁ。返事してくれ」

 …このまま…こうしていてもきっと扉を突き抜けられる。殺されるんじゃないか。そう…不安になって仕方がなかった。
 でも…扉を開けたら…このドアさえ開けたら…僕は、解放されるというのか?そうじゃない気がする。どの道僕には選択肢なんてなかった。

 怖い。このヒトが分からない。

 僕はゆっくり…扉の前に行った。

 カギを開けた、と同時だった。

 そこにいたヒトは僕の部屋に入り、



 何があったか。もう覚えてない。

 また小さく囁かれた。


「今日からここが私たちの家だ。忍び込まずに、堂々と帰ってこられるな。

 なぁ、カービィ。
 私を 愛してくれ…」







 締りは悪いけど書いててとても楽しかった。
 メンヘラってビッチばっからしいっすね。愛されたいんで。





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